オリオンが台湾でビール売上6位に躍進 上半期に仕掛けた戦略とは

 
台湾の小売店に並ぶオリオンビール商品(オリオンビール提供)

 台湾のワイズコンサルティンググループ(台北市、吉本康志社長)のワイズリサーチはこのほど、台湾での6月のビールブランド別売上ランキングで、オリオンビール(沖縄県豊見城市)が6位にランクインしたと公表した。日本国内ブランドではエビス(12位)、サントリー(14位)を上回った。台湾でのオリオンビールの取扱店舗数の拡大や商品展開のバリエーション増で、消費者が手に取りやすい状況を作り出したことがその背景にある。

国内外有名ブランドと肩を並べる

 調査は台湾消費者のビッグデータを基にした。トップ5は順に、台湾ビール、キリンビール、ハイネケン、バドワイザー、アサヒ、と続いた。台湾最大のビールブランド「臺灣啤酒(台湾ビール)」以下は日本など外国産ビールの人気が高いが、台湾産ビールでは「臺虎精醸(タイフー)」(8位)、「金色三麥(ジンスーサンマイ)」(10位)がランクインした。同レポートによると、台湾の防疫レベル3(日本の緊急事態宣言相当)が発表された5月第二週(5/10〜5/16)と比べて、7月の第一週(6/28〜7/4)でのビール全体の売上高は6.3%増となった。

ワイズコンサルティンググループプレスリリースより

取扱店舗が4倍に

 今回の台湾市場での6位ランクインについて、同社海外事業部主任の山田親美(ちかよし)さんは「これまではランク外でしたが、急激に台湾での売上が伸びました」と説明する。転機は2021年1月~6月にかけての取扱量販店数の急速な拡大だった。

 当初から台湾では、ファミリーマート約3000店舗で取り扱いがあったが、今年に入ってからはコンビニでは「セブンイレブン」や「Hi-Life」、スーパーマーケットでは「カルフール」や「PX Mart」などでも取り扱いが始まり、合計取扱店舗が一気に約4倍の約1万2000店舗へと急増した。店頭で来店客がオリオンビールを目にし、手に取る機会が増えたことになる。

 さらに、商品ラインナップの充実も図ったことも新たなニーズを掘り起こすこととなった。主力商品の生ビール「ザ・ドラフト」に加え、6月からはクラフト生ビール「75BEER」を夏限定で展開し、“第三のビール”「サザンスター」のファミリーマート限定デザイン缶を販売した。「これまで台湾に紹介出来ていなかった商品を初めて取り扱って頂けたというのが、6月期の(好調の)主な要因だと思っています」(山田さん)

今年2月製造分よりリニューアルした「ザ・ドラフト」(オリオンビールのプレスリリースより)

品評会高評価で海外展開にも自信

 加えて、「沖縄でしかこれまで飲めなかった商品」が飲めるようになったという点を、ウェブでも積極的にアピールしていった。同社が台湾向けに公開するフェイスブックページや、台湾メディアへのアプローチに加え、中華圏では主流となりつつある、専門性を持ったインフルエンサー「KOL(キーオピオニオンリーダー)」とタイアップしてのマーケティングにも力を注いだ。

台湾の小売店に並ぶオリオンビール商品(オリオンビール提供)

 コロナ前は台湾からも多くの観光客らが沖縄に足を運んでいた。台湾―沖縄間の人々の往来が難しい時期が続くが、山田さんは「台湾の方が沖縄県産のオリオンビールを飲んで、楽しかった沖縄旅行を思い出してもらってもらえたらうれしいです」と思いを語る。

 オリオンビールは2020年に、世界三大ビール品評会の1つ「オーストラリアン・インターナショナル・ビア・アワード」で銅賞を受賞したことから、山田さんは「世界のどこでもおいしいと思ってもらえる自信があります」と話し、同社は台湾の他にも、米国、中国、豪州、香港といった市場に積極的に参入・拡充していく予定だ。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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