「誰のための観光なのか」 これからの沖縄観光に必要なこと①

 

 長引く新型コロナウイルス感染拡大の影響で、大打撃を受け続けている沖縄の観光業。コロナ禍だからこそ観光のあり方について考えざるを得ない、向き合わざるを得ない状況下にある。ただ、沖縄観光にはコロナ以前から既に課題が多々あった。財源確保の手法、入域観光客数優先の施策、オーバーツーリズム、なかなか実現に漕ぎ着けない質の向上…。
 これからの沖縄観光を考える上で必要なことを、ハイアットリージェンシー那覇沖縄セールス&マーケティング部の常井大輝さんと、完全ボランティアで沖縄県内をガイドしている稲福政志さんに聞いた。

「宿泊税再検討で早急な財源の確保を」

 ―コロナ禍で沖縄の観光のあり方を考える機会が増えています。ただ、そもそもコロナ以前からも課題は山積みではありましたが、常井さんが真っ先に思い浮かぶ課題は何ですか?

常井大輝さん(以下、常井):いくつかありますが、先ずはインフラ整備や観光業界の賃金を上げるなど、観光施策を充実化するための財源の確保が最も大きいかと思います。これは沖縄に限ったことではなく、日本全体の話でもあります。それと、観光人材の不足です。「地域住民の理解」ということも含みます。観光業界は賃金の低さもある上に、労働も過酷なイメージがあります。また、昨今のコロナの影響で不安定といったイメージもあって人材不足は今後さらに加速していくと思います。

 そんな中で、やはり何をするにしろ財源確保が必要です。そのためには、入域者数ではなくて消費額を増やす必要があります。ちょっと前に「ハワイに追いついた」ということも言われていましたが、確かに人数的には追いついたのかもしれませんが、消費額の面では全然追いついていません。また、お金が企業だけでなく地域にも回り、観光で地域が豊かになって経済再興が見込まれる体制を作る必要もあります。財源不足の状況下で何が起こるかというと、オーバーツーリズムです。予算を捻出できずにインフラも含めた受け入れ体制ができてなくて、観光業に携わる人も少なくて、地域がパンクする。そうなると、リピーターの増加にもつながらない。こうした、財源がないことによる負のサイクルが生まれてしまいます。

 じゃあどうすればいいのか。私が提起しているのは宿泊税導入の実現です。昨年に1度頓挫してしまっているようですが、今の既存のものではなく海外の制度と比較しながら使用用途や徴収方法、徴収額、などを再度検討するといいのではないでしょうか。

 ―海外では例えばどんなシステムで宿泊税を課しているんですか?

常井:海外の事例では、基本的にゲストから宿泊費に上乗せして徴収する形の「リゾートフィー」などがあります。対して、沖縄が検討しているのは企業から徴収するというものなんです。これだと、企業経営を圧迫することになります。ですから、政府や自治体が「宿泊客から徴収する」ということを法律などで決めた上で、宿泊費に上乗せしてゲストに支払ってもらうのが望ましい。例えばラスベガスは宿泊費の20%、オーランドは6%、ハワイは6%以上を徴収しているようです。

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