「誰のための観光なのか」 これからの沖縄観光に必要なこと①

 

 ―観光地の印象があまり残らないということでしょうか。

稲福:メジャーな観光地では、案内板が堅苦しくてあまり面白くない印象を受けることもあります。もちろん、歴史的なことなどをきちんと学ぶことも大事ですが、“ツカミ”としてはちょっとした豆知識や雑学でもいいと思うんです。例えば僕が守礼門の真ん中を歩いた時に「そこは王様の通り道だから歩いたらダメだ」と先輩に怒られたことがあるとか、そういうちょっとしたエピソードでもいい。

 あとは、首里城は警備員のおじさんたちが1番面白いんです。彼らは首里城の警備という仕事に誇りを持っていきいきとしている。「(2000年の)サミットの時からずっとやってるよ」とか嬉々として話してくれたり、仕事をちょっと抜けてまで穴場を案内してくれたり(笑)彼らは本当に好きでやっているから伝わるものがあって、せっかく観光するのであれば、そういう人たちとの出会いや場所の思い出を持ち帰ってほしい。

「質向上」の実現はいつ?

 ―入域観光客の数字を増やすことが目的化してしまい、観光の内容そのものの充実化、地元住民にとっての持続性という観点が弱いのは県民としてずっと感じています。

常井:日本の観光業の歴史の推移を見てみると、今でこそホテルでも高単価・付加価値のある商品を売っていこうという機運がありますが、少し前までは「どんどんコストを下げて安売りしてとりあえず人を呼ぶ」という方針でした。業界全体がそういう雰囲気でこれまできているので、今になって値段を上げて内容の充実化を図るというのは苦手な手法なのだと思います。真逆の考え方ですので。ただし今後は方針転換が必要になるので、若手の人々の意見や考えを取り入れ、新しい観光を創造していくべきだと考えています。

 ―「質の向上」を目指すべきだ、ということは何年も言われ続けてますね。

常井:なかなかできないでしょうね。そういう販売の仕方をしてきていない世代の人たちがある程度上にいるので、ガラッと変えるのは難しいのが現状なんだと思います。

稲福急にシフトチェンジしたらおそらく一時的に人は来なくなるかもしれませんが、そこを我慢できるかどうかという気がします。それで言うと、今はコロナで人が激減していることもあって、ある意味では転換の大きなチャンスだとも思うんです。「次は1200万人だ!」というタイミングじゃない。

常井:観光客数については消費額をある程度金額に換算して、そこから逆算して単価と人数を算出するという考え方をした方がいいと思います。
 質向上につながるブランディングという面においても、沖縄も日本も課題は共通しているはずです。“沖縄”というブランドを作り上げるには、“沖縄”を代表するDMOのような組織が先頭に立って県内の企業と共存し、まとめ上げるリーダーになる必要があります。

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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