「誰のための観光なのか」 これからの沖縄観光に必要なこと①

 
今年3月頃の那覇空港

 ―やはり財源確保の点からは宿泊税は避けて通れない。

常井:避けて通れません。観光の消費額の中では宿泊が大きな割合を占めていので、宿泊税が一番良い手段なんです。今は我々の税金で地域や街づくりの財源を賄っている状態です。その資源は、観光で沖縄を訪れた人たちも使います。そうすると、平たく言えば地元住民が出している税金は、観光客など地域住民以外の人たちのためにも使われている。しかし、そもそも税金はその街の人たちの生活を良くするためのものです。
 地域の資源を使って楽しむのであれば、それに対してもお金を払います、というのは観光客の責任としてあるべき姿なのではないかと思います。

観光地であり、住んでいる街でもあるギャップ

 ―ボランティアでガイドをしている稲福さんは、地域を回っていて感じることはありますか?

稲福政志さん(以下、稲福):僕は直接的に観光の仕事をしているわけではなくて、ただ好きでガイドをしている立場ですが(笑)案内をしていて「誰のための観光なんだろう」と思うことがよくあるんです。

 僕は生まれ育ちが首里です。今でこそコロナですごく静かになっていますが、観光最盛期には狭い道を修学旅行のバスが何台も連なって渋滞が起きたり、その影響で救急車が通れなくなったりもしてました。さっきも出ましたが、正にオーバーツーリズムで、その街に住んでる人が嫌になってしまうという状況です。そのほかにも、僕が幼稚園くらいの時にはいわゆる「街のスーパー」もいくつかありましたが、観光関連の整備が進んで今はコンビニしかなくなってしまい、買い物をするために割と遠くまで行かなければならなくなったという変化もあります。

 じゃあ一方で、観光地としての首里に来た人たちが楽しんでるかと言うと、そうでもないんです。例えば首里城で修学旅行の生徒たちが、ガイドの話を“聞かされている状態”をたびたび目にします。「沖縄だからとりあえず首里城」みたいに、ツアーに組み込まれているから漫然と来ている感じで。身の回りの県外の人でも「修学旅行で沖縄行ったけどあんまり覚えていない」という人も結構いるんですよね。それって行く意味あるのかな、と思ってしまいます。
 観光地であり、同時に僕たちにとっては住んでいる場所でもあるというギャップがあって、そこの折り合いがうまくついているとは言い難いです。

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