オンライン旅、西表・国頭に申込560人超 沖縄観光の未来拓くか

 

 コロナ禍での新しい観光の在り方として「オンライン旅行」が存在感を高めている。Zoomなどのオンラインツールを活用して“旅行先”のガイドが画面上で名所や歴史などを案内してくれるサービスだ。旅行会社の旅工房(東京都)が8月29日に企画した西表島と国頭村を舞台にしたツアーには全国各地から562人が申し込んだ。コロナ禍でありとあらゆる分野のオンライン化が進む中、これまでは「物理的な移動」が前提だった旅行の分野にも新しい波が来ている。苦しい状態が続く沖縄の観光業界はこの波に上手く乗ることができるのか。

記念写真はスクリーンショット

 「こちらの奥まで広がっているのがマングローブです」―。

 西表島の南東部、仲間川にかかる仲間橋の上から、カメラの向こうで画面を見つめるお客さんに語り掛けるのは、石垣島ドリーム観光の富本公臣さんだ。7月に「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」が、その貴重な固有種の多さや生物多様性などが評価されて世界自然遺産に正式登録されたことを受けて企画されたこのオンラインツアーでは、西表島とつないで動植物の説明をしたり、国頭村の「ヤンバルクイナ生態展示学習施設」とつないでヤンバルクイナの生態を解説したりするなどの「自然を学ぶ生中継」が臨場感を演出する。

石垣島ドリーム観光の富本公臣さんと同社キャラクター・ドリカンくん

 参加者がその場で質問できるチャット機能も、さらに臨場感をかき立てる。

「イリオモテヤマネコには遭ったことはありますか?」
「今まで2回だけありますよ。宝くじに当たったような感覚でした」
「西表島にはハブはいますか?」
「サキシマハブなどさまざまなハブが生息しています。山の中に入る時には注意が必要です」

 奄美群島以南に自生する「モンパノキ」についても、富本さんは「新芽は天ぷらにして食べることができます」「沖縄伝統の水中メガネ『ミーカガン』の材料になります」など、自然環境を人々の生活・文化を結び付けて解説する。参加者はチャットで「木でできた水中メガネ、すごいですね」と感心していた。

 見晴らしの良い景色やヤンバルクイナのアップが画面に映し出された時には、進行役を務める旅工房のトラベルコンシェルジュ・小山小夏さんが「今、ぜひスクリーンショットを撮ってください」と“シャッターチャンス”もしっかりと作ってくれる。

映像と音の両方でヤンバルクイナの臨場感

 今回のツアーで一番チャット欄が熱く盛り上がったのが、ヤンバルクイナがカメラの前に現れた時だった。「かわいいー!!」「キレイな鳥さんですね!」「紅いくちばしがきれい!」と参加者のコメントが次々と更新されていく。「きゅっ、きゅっ、きゅっ」と鳴き声が明瞭に聴こえるのは、ヤンバルクイナの鳴き声を事前に収録しておいたからだ。参加者一人一人の手元にあるパソコンやスマートフォンなどのスピーカに直接鳴き声を届けることができるのは、オンラインツアーならではの魅力だ。

国頭村安田の「ヤンバルクイナ生態展示学習施設」

コロナ後の直接集客にも期待

 オンラインツアーを実施することで、アフターコロナを見据えた「リアル旅行」の集客にもつながるという期待感もある。

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