最低賃金820円に コロナ禍の中で大幅引き上げ
- 2021/8/15
- 経済
沖縄地方最低賃金審議会(会長・島袋秀勝弁護士)はこのほど、県内の最低賃金について、現在の時給額792円から28円引き上げ、820円とするよう沖縄労働局の福味恵局長に答申した。コロナ禍の中で19年度と並ぶ過去最大の大幅引上げとなり、使用者側からは強い反発もあった。
厚生労働大臣の諮問機関「中央最低賃金審議会」は7月、全国の最低賃金について28円を目安に引き上げるよう答申していた。沖縄でも最低賃金審議会の専門部会が断続的に議論を行った。
当初は、労働者側が45円の引き上げを提案したのに対して使用者側は現状維持を主張。その後、労働者側は約30円、使用者側が1桁の引上げをそれぞれ提示したほか、使用者側は新しい最低賃金が発効する日を延長(最大で来年4月1日)することも求めた。
結論は12日の審議会にもつれ込み、最終的に労働者側は30円、使用者側は28円の引き上げを主張。採決を取った結果、使用者側5人と公益側4人の計9人の賛成多数で28円引き上げ案が可決された。発効日の延長は行わず、改定後の最低賃金は早ければ10月8日も発効する。
ただ、今回の答申には、雇用調整助成金の要件緩和や中小企業・小規模事業者の資金繰り支援、コロナ禍で大きな影響を受けている宿泊等の観光、飲食、交通運輸業と関連する中小・小規模事業支援を行うことなどを求める付帯決議も付された。付帯決議付きの答申は、近年例がないという。
使用者側「大変に遺憾」
使用者側、労働者側双方からの意見書も出された。使用者側は、県内で新型コロナウイルスの新規感染者数が連日、最多を更新して厳しい経済状況にあることなどを指摘して、「中央最低賃金審議会の状況認識は沖縄県内の経済、雇用の実態と大きくかけ離れている」と強調した。
また、「沖縄の経済、雇用の実態を見極めると最低賃金を引き上げる環境になく、現状維持とすることが適当であると主張したが、労側が目安を上回る額を譲らなかったことから苦渋の選択として、目安額28円を不本意ながら了承した」とも述べている。
さらに、「新型コロナウイルス感染症が急拡大している事態にあっても引上げ額や発効日についての配慮がなく審議が進められたことは、大変遺憾に思っている」とした。
一方、労働者側の意見書では「最低賃金引上げ発効については、全労働者の利益であることから、早期発効に向けて最大限配慮すること」「中小・業者において最低賃金の引き上げが確実に行われるよう、労務費の上昇分が適切に取引価格に転嫁できる環境整備と中小企業・小規模事業者支援策の周知徹底を行うこと」と強調している。
(記事・写真・図 宮古毎日新聞)