オンライン旅、西表・国頭に申込560人超 沖縄観光の未来拓くか

 

 石垣島ドリーム観光の山田豊さんは「緊急事態宣言がずっと延長されるなどで、ツアーがほぼ動いていないような状況だったので、オンラインで現地から生の声を届けられるというのは非常にありがたいことでした」と話す。

 今回のオンラインツアーに参加した人からは「実際に(西表島の自然の)実物を見てみたい」という声もあったという。「西表島へは、これまで石垣からの日帰り客が8割程度を占めていましたが、しっかり滞在して過ごしてみたいというお客様からの声も頂きました」と山田さんが話すように、新たな観光のニーズの掘り起こしにもつながっている。「動画でオンタイムで(土地の魅力を)お伝えできるのは、旅行意欲を湧き立てるものがあるのではと思います」

海外で確立されつつあるオンライン旅行市場

 主催する旅工房は同様のサービスを「オンライン旅会」と銘打ち、2020年5月から月に2、3回のペースで実施。これまでにハワイやエジプトなど定番観光地からブータンやニューカレドニアなど通好みの行き先まで、海外だけで14カ国・地域をつなぎ、国内各地でも行ってきた。ハワイへの旅会では、当初は10~20人の申込者数だったものの、開始から約10カ月で1回あたりの申込者が約800人に膨れ上がるほど好評だ。

 同社で広報を担当する深津小百合さんによると、顧客の6割ほどは40~50代で、そのほとんどが女性だそうだ。同社のリアル旅行を申し込む層が20~30代であることを考えると、その年齢層は上がっている。

旅工房の深津小百合さん

 いつかまた実際に足を運ぶ旅行に気軽に行けるようになった時の行き先選びにも、オンラインツアーが活用されているという。深津さんは「若い年齢層の方はSNSで情報取集されることが多いのですが、上の層になると『自分の目で確かめたい』という方が多くなる印象です」と話す。

 オンラインツアーは海外では市場として確立されつつあるというが、日本での市場規模はまだ小さい。それでも「1年前や半年前から市場が広がっています。みなさんが(Zoomなどの)オンラインツールに慣れてきたということや、リピーターが増えていることが挙げられます」(深津さん)

 沖縄県内のオンラインツアーについては「離島など、普段なかなか簡単には行けない場所に人気が出てくると思います」と話すように、時間や場所の制約を超えるインターネットのメリットに顧客も乗る形だ。離島の多い島しょ県で、国内各都市からは距離が遠い沖縄県。独自の文化や自然環境などコンテンツも豊富だ。オンラインとオフラインとを両立させる「ハイブリッド型観光」黎明期に、いかに舵取りをするかでさらなる沖縄観光の可能性が広がろうとしている。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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