沖縄に眠る古映像、東京で復旧続々 紡ぐ歴史と「2025年問題」

 
かつての映像記録の主流だったものの、今や過去のものとなったVHS

 そんな「古き遺産」となりつつある磁気テープの再生機器の入手が困難になり、2025年ごろには一般家庭などでテープを再生することが難しくなる問題が浮上している。

 これを視聴覚資料の「2025年問題」という。2019年にはユネスコ(国際連合教育科学文化機関)は「人類の言語的・文化的に多様な知識」の記録をデジタル化して長期保存する観点から、国際音声・視聴覚アーカイブ協会と共同で、この2025年問題の注意喚起をするプロジェクトを開始した。

 中でも、沖縄特有の高温多湿な環境はフィルムの保存にとっては致命的だ。松信所長は「放置してしまえば徐々に劣化して最終的には修復不可能になってしまいます」と警鐘を鳴らす。この問題への意識をできるだけ多くの人と共有すると共に、沖縄県内でも修復につなげられるような動きも今後の展望として見据えている。

残すだけではなく、活用も

 「沖縄県民の方は、古い映像に興味のある方が多いですし、資料保存に関わる担当者も『残さなければ』という思いが強いです」と松信所長は言う。昔の映像を修復しては、その地域で上映会を行ってきた。「もう、満席でした。みなさんとても喜んでくださって、中には泣きながら握手を求めてくれた高齢の方もいました。座間味島での上映会では、島民の半分近くが集まって懐かしんで頂けました」

 このような、人々のうれしそうな笑顔が、沖縄の映像修復を続ける原動力になっている。「デジタル化して残すだけでは成り立たないと思っています。残したものをきちんと活用していろんな方に見てもらって、例えば子どもたちに歴史や文化を学んでもらうとか。やっぱり動画って情報量も多いですし分かりやすいですよね」


■関連リンク
株式会社東京光音
沖縄伝統の木造船「サバニ」 最年少職人が文化を繋ぎ続ける理由 | HUB沖縄
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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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