なぜ浦添市はワクチン増配を強く求める?鍵は「沖縄県の計算式」

 

 県の広域接種会場が位置する那覇市と宜野湾市の両方に近い浦添市の住民は、7月の早い段階で県の広域接種を利用していた一方で、那覇と宜野湾の両市民は接種券がなく県の広域接種を受けられずにいた人も多かったため、当時の会場には空きが目立つほどだった。それによって7月の広域接種の利用者の多くを浦添市民が占めていた結果、県には「広域接種に浦添の人はたくさん行く」とみなされ、市に配分される数が減少してしまった。

 松本市長は「なのでそもそも(広域接種に浦添市民が多くいた)7月の数字だけを基にして見込み数を出すのが間違いなんですよ。浦添の人だって浦添でワクチンを打てたら打ちたいですよ。市のワクチンが足りなかったから市民は県の広域接種も利用したわけであって『広域に行く人が多い』という理由で市のワクチンを減らされたら本末転倒です」と力説する。

浦添市役所
浦添市役所

 結果としては、配り終えた接種券の受け皿として県の広域接種センターが機能していたという見方もできる。県の資料によると、7月31日時点で広域接種センターで1回目の接種を終えた浦添市民は1万1258人と、那覇市の1万2768人に次ぐもので、人口あたりでは断トツの接種数だ。

「余った分を回してほしい」

 市町村ごとに今後どれぐらいのワクチン本数が県の広域接種会場で接種されるのかを県が見込んだ「広域接種会場接種見込み」について、実際に8月30日~9月12日の「第13クール」の配分計画案では那覇市(人口約32万人)で4万2134回分、宜野湾市(人口約9万人)が1万1685回分となっている一方で、浦添市(人口約11万人)は3万7151回分とみなされている。
 浦添市は、人口にして約3倍の開きがある那覇市と比べても近い本数が予測されており、県がこれほど「たくさんの浦添市民が広域接種を使うはずだ」と勘案していることを意味する。

 松本市長は「定められた計算方法や言い分がいくら正しくても、現実に即した時に正しいとは言えないこともある」と、県の対応について見直しを求める。

 第13クール分として国から県に配分された142箱を前述の計算式に沿って配分していくと、7箱が余ることになる。この残余分7箱は、7月22日に運用が始まった「沖縄県那覇クルーズターミナル接種センター」に割り当てられ、学校や公共交通など、社会基盤を支える仕事に従事するエッセンシャルワーカーへの接種へ活用されることとなる。

 配分計画の資料上で残余分を示す「7」の文字を指差し、松本市長はこう述べた。「余った分を少しだけ浦添に回してくれないか、がこちらの言い分です」


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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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