沖縄振興予算 概算要求は2998億円 3000億円を下回る
- 2021/8/26
- 政治
内閣府は2022年度沖縄振興予算の概算要求額を2998億円とする方針を固めた。仲井眞弘多県政時代に政府が「21年度までの3000億円台」を確約した期限が過ぎ、当初予算との比較で12年度(2937億円)以来10年ぶりに3000億円を割り込んだ。
内訳では自治体が使途を決められる「一括交付金」が、21年度当初予算と同額の981億円となった。22年度以降の沖縄関連税制の改正要望案もまとまり、ビールと泡盛の酒税軽減措置の段階的廃止をはじめ、情報通信や金融などの特区制度、免税店制度などは現行からの見直しを求めている。
現行計画の事業を継続 新規も
概算要求の内訳をみると、現行の沖縄振興計画でこれまで取り組んできた項目の多くが継続となり、産業基盤強化や人材育成などの新たな事業予算も計上している。
県と市町村に配分され、使い道を決められる「一括交付金」はソフト504億円、ハード477億円の計981億円で、内訳を含めて21年度当初予算と同額だった。県を通さずに政府が市町村に直接交付する「沖縄振興特定事業推進費」も22年度以降継続し、80億円(21年度85億円)を充てる。
政府が22年度以降も沖縄の特別措置を継続する根拠に挙げた「子ども貧困」には19億円を計上し、21年度から4億円上積みした。
北部振興や離島振興など、現行計画で進めてきた取り組みも継続する。沖縄科学技術大学院大学(OIST)は224億円で、21年度から34億円の増額要求となった。
製造業がぜい弱な沖縄で産業振興を図るための新規事業にも着手する。競争力強化や人材育成を推し進める予算として計18億円を計上。2050年のカーボンニュートラル実現に向けたクリーンエネルギー導入調査事業(2億円)や、テレワークに必要なデジタル化やITスキル習得を進める事業(1億円)なども新たに事業化する。
米軍用地の跡地利用にも力を入れる。米軍キャンプ瑞慶覧・西普天間住宅地区跡地には琉球大学病院が移転し、25年に医学部が開学する計画となっている。政府は琉大病院を中心に健康医療拠点を整備する考えで、概算要求には関連経費163億円が盛り込まれた。
鉄軌道の導入調査も22年度以降継続する。
ビール酒税軽減は26年に廃止
税制改正では、概算要求を前に内閣府がまとめた22年度以降の沖縄振興の「基本方向」に沿って、泡盛やビールの酒税軽減措置の段階的な廃止を盛り込んだ。軽減率を段階的に引き下げ、泡盛は10年後に、ビールは26年10月のビール類税率の統一に合わせてそれそれ廃止とすることを求めている。ガソリン税の軽減措置や電力関係の税制優遇はいずれも2年の単純延長とした。
対象業種や地域を絞って税制上の優遇措置を講じてきた地域・特区制度については、5項目全てが見直した上での2年延長とし、対象地域の拡充や税額控除の条件変更などを盛り込んでいる。
県は3600億円を要望
概算要求に先立ち、沖縄県の玉城デニー知事は政府に3600億円の予算措置を要望していた。仲井眞県政時代に記録した3501億円(14年度当初)を上回る水準だったが、実際の要求額が2998億円となり、大幅に下回った。
沖縄振興予算については、安倍晋三前首相が13年12月、当時の仲井眞県知事に対し、現行の沖縄振興計画の期限となる21年度まで3000億円台を維持すると確約。14年度には3501億円まで増額され、後を継いだ菅義偉首相も、米軍基地問題で玉城デニー県政との対立が続く中で「何があっても3000億円台は維持する」と周辺に語ってきた。
その現行計画が終わりを迎え、沖縄振興の新たなスタート地点となる22年度概算要求が3000億円台を割ったことは、「政権から沖縄への明確なメッセージ」(政府関係者)となっている。概算要求を踏まえ、今後は沖縄振興予算案が年末にまとまる予定で、年明けの通常国会で審議される