エコツーリズム第一人者がやんばる世界自然遺産登録に大賛成の理由

 

 エコツーリズム体験などを通して、人間側が自然を知り、保全意識を高めることが、持続的な自然保護にもつながる。

 修学旅行なども多く受け入れてきた中根さん。例えば、マングローブ観察では、「『マングローブ教える』だけではなく『マングローブ教える』ということを命題としています」。マングローブを切り口にして、マングローブそのものについてだけではなく、人間の活動と自然や生態系がどのように関わっているのかを伝えている。

「マングローブがあることで、根っこが赤土流出を防ぎ、落ち葉などは水生生物の養分になります。『海に養分を与えるか、赤土を与えるか』ですよ。海が赤土を被ると、サンゴ内部で共生する褐虫藻に日が当たらずに光合成できなくなって、サンゴが死んでしまいます。魚の産卵場所となるサンゴが死ぬと、魚もいなくなります。負の生態系ができてしまいます。全部つながっているんです」

エコツーリズムは環境教育と共に

 このように中根さんは「環境教育が含まれているからこそエコツーリズム」だとの信念を持つ。さらに、観光産業として考えても、自然を守ることがやんばるとしての価値を高めることにもつながる。「海外では1回のツアーで20万円、30万円というものもあって、それでも半年待ちということがあります。小人数で、しっかりした公認ガイドが連れて行って。こういうのが理想的ですよね。そうなれば、自然に負担をあまりかけないことになります」

県道2号線・通称与那安田横断道路

 やんばるエコツーリズム研究所に取材に向かう道中、やんばるの森を東西に貫く県道2号線、通称与那安田横断道路で、国の天然記念物でもあり同地域の固有種・ヤンバルクイナに沖縄出身の筆者も人生で初めて遭遇することができた。

ヤンバルクイナ(写真ACより)

 このヤンバルクイナも、近年では自然繁殖に成功し個体数を増やしている。「自然や生き物を守り続けることで、その地域の魅力度が上がり、人が集まるということが本当に起こってきています」と中根さん。「自然環境の厳密な保護」と「地域活性」の両輪が、沖縄でも上手く回っている。

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長濱 良起

投稿者記事一覧

フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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