今こそ喜納昌吉① 隣人だった『ハイサイおじさん』の過去

 

自分たちが興奮できる文化を自分たちで

 しかし、沖縄民謡とその他のジャンルをミックスさせるという手法は、りんけんバンドやBEGINといった、いわゆる「沖縄ポップス」でも名をはせるバンドの先駆けとなり源流となったことも確かだ。

 そんな喜納は今の沖縄の音楽シーンをどう視るか。

 「一番人が入るイベントが『おやじラブロックフェスティバル』でしょう。それ自体は良いことだと思うんだけど、沖縄が基地問題も含めてさまざまな課題を抱える中で、ミュージシャンに力がなくなっている」

 そのことを危惧しながら「“沖縄ブーム”は“沖縄ムーブ”に変えていかないと」と、一過性な流行ではなく、沖縄自身から巻き起こすムーブメントの必要性を強調する。

 「沖縄は、アメリカから借りてきたような文化で盛り上がろうとするのは限界がある。自分で勃起できるような文化を切り拓かないと。沖縄の(文化的な)“復帰”運動は、間違いなく“勃起”運動だ。アメリカの金玉の興奮を借りたらダメだ」

 「勃起運動」とのすさまじいインパクトがあるフレーズにこちらがケタケタ笑うと「ウケたな、ワハハ。ウケたなぁ」と喜納も嬉しそうに笑っていた。

上品も下品も、全てを混ぜて

 喜納はこのように、敢えて性的な言葉や下世話な表現をすることがある。これには、本人なりの意味がある。

 “品(ひん)”を食べ物に例えて話す。「上品なものというのは、見た目は美しいけど、味が物足りないんだよ。下品なものは、味は美味しいけど臭くて耐えられないんだよな。中品というのもあってね。どっちつかずで中途半端になっちゃうんだ。だったら上品も中品も下品も、全部一緒に食べてしまえばいい。そうすることで、絶品になる

 何かを区切ることに囚われない姿勢は、喜納の音楽にも表れている。

 庶民の生活を歌いながらも師匠から弟子へと受け継がれる民謡と、当時の時代背景では「不良だ」とも言われたロックの要素などを混ぜて、絶品へと昇華させた。特に、代表曲の一つでもある『花~すべての人の心に花を~』は、世界60カ国以上のミュージシャンにカバーされ、同曲がヒットした中国や台湾では一般層にも浸透している。

 「『花』を出した時は、酷評されたんだから。何やっても僕のことは悪く言うんだよな。でも、日本のミュージシャンたちが触れきれないところを触ったっていう自信があったわけだね」

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今こそ喜納昌吉② 39年ぶりの新曲は、なぜ突然演歌だったのか | HUB沖縄

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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