今こそ喜納昌吉② 39年ぶりの新曲は、なぜ突然演歌だったのか
- 2021/6/14
- エンタメ・スポーツ
『花~すべての人の心に花を~』や『ハイサイおじさん』などで知られる、沖縄を代表する音楽家・喜納昌吉。2年前に人生で初めて歌唱指導を受けた経緯、自分でも厳しいと分かっていた知事選に出馬した真意、板門店の北朝鮮サイドで『アリラン』を熱唱した理由とは。世界平和へのメッセージを届け続ける喜納氏に、慰霊の日を前に実施したインタビュー企画の後半です。
突然演歌を出した喜納の境地
かねてから「国境からの独立」を唱えて世界平和を訴えている喜納は「音楽をジャンルで区切るのは、国を国境で区切ることと一緒だわけさ」と、さまざまな音楽に取り組んでいた。
その中で喜納は19年9月、意外ともいえる楽曲をリリースした。自身初の演歌となる「富士山Japan」だ。
「僕は唯一演歌だけトライしてなかったわけよ。作る機会がなかった」。あるレコード会社からのオファーを受けたことが事の始まりだ。当初は歌詞が民族派的な固い内容だったため曲を付けにくく困ったというが、あるきっかけで富士山に登った時に、思うことがあった。「富士山自体に党派性はない。富士山を自民党だとか、立憲民主党だなどという人はいない。日本のアイデンティティのシンボルで、中庸的でしょう」。多少の歌詞の変更を経て、作品制作に至った。
「当初は小林旭が歌う予定だったんだよ。それが自分が歌うことになった。演歌なんか歌ったことないから、特訓されてね。父からも誰からも今まで一度たりとも音楽を習ったことがないのに初めてですよ、歌唱指導は」と笑う。この曲についても「喜納昌吉はどこを向いているんだ」と批判を受けたというが「ジャンルを飛び越える努力をしている。ぎこちなくても、これがボーダレスだよ」。
世界平和の実現に向けては、日本の役回りに期待を寄せている。それが7月開催の東京オリンピック・パラリンピックだ。
コロナ禍での開催の是非について賛否が分かれるが「どんなことがあっても開催を諦めたらダメだ。日本こそかすかな光を見せないと。僕は言いたい。いくらでも応援するよ、頑張れ日本と。日本が世界平和をもたらすために貢献できるなら、頭には来るけれども、僕は沖縄と日本との歴史を全部清算する」
政治家・喜納昌吉
喜納には音楽家としての顔の他にも、よく知られた顔がある。それは政治家としての顔だ。喜納のもとには「なぜ音楽家が政治を?」と批判的な声も寄せられたというが、本人に言わせると、音楽にも政治にも共通した一貫性がある。「世界を変えようとした」のだ。