東京五輪は沖縄空手発展の“波”となるか 「目指すは無形文化遺産登録」

 
沖縄伝統空手道振興会HPより

 57年ぶりに日本での開催となった東京オリンピックでは、空手が初めて競技に加わった。来る8月6日には、金メダル最有力候補の喜友名涼選手が出場する男子形競技が行われる。
 一般社団法人「沖縄伝統空手道振興会」で事務局長を務める上原邦男さんは「国際的に最も大きなイベントに取り上げられた意義はとても大きいと思います。これを機に、今まで以上に空手の世界的な広がりが生まれるといいですね」と期待する。
 しかし、沖縄空手を巡っては伝統の継承と観光コンテンツ化のバランスや、海外受容と県内での理解不足のギャップなど、今後の振興のために取り組まねばならない課題は少なくない。

スポーツと武道、不易と流行

 上原さんは先ず「空手は『スポーツ空手』と『伝統空手』に大きく二分されます」と語り出した。オリンピックの空手は前者だ。競技としての空手は審判にアピールして評価を得るため、演武でも見栄えを重視して動作を大きくするなど、時代の流れに応じてルールや形式が変わっていく面がある。

 一方で、伝統空手は伝統的な精神を受け継ぎ「自分との対話や“見えないもの”との対話」を積み重ねていくことに重きを置く。ある程度の年齢の若さと体力が必要なスポーツ空手とは違い、歳を重ねても体力に応じて一生続けていけるという。事実、70代や80代になっても健康体で続けている空手家も一定数いる。

「どちらが良い悪いなどと優劣をつけるような話ではありませんが、伝統とスポーツとの区別は必要だと思っています。現在はスポーツの方が入り口として一般的ではありますが、競技に取り組む中で沖縄が発祥の地であることも含めて歴史的な面にも目を向けていかなければ、伝統を守っていくことが困難になります。不易と流行を見極めつつ振興に取り組んでいかなければなりません」

沖縄県内の空手事情について語る上原邦男さん

“聖地・沖縄”と海外とのギャップ

 沖縄県は2016年に文化観光スポーツ部内に「空手振興課」を設置し、18年には沖縄空手の保存・継承・発展を図るための「沖縄空手振興ビジョン」を20年計画で策定している。その中では、後継者不足や門下生の少なさ、道場運営の厳しさが課題として挙げられている。

「欧米や南米など海外の空手道場の視察に行きましたが、門下生が数百人という規模のケースも少なくありません。その一方で、“空手の聖地”である沖縄県内の道場だと100人いれば多い方で、大体が20~30人規模です

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