安全保障がなぜ次期沖縄振興計画に?

 
沖縄県庁

 自民党の沖縄振興調査会(小渕優子会長)が3日、来年度からの次期沖縄振興計画についての提言をまとめた。5日には玉城デニー知事にその内容について説明が行われる。

 提言ではまずこれまで5次にわたる振興計画によって復帰時には4459億円だった県内総生産が4兆4141億円と10倍になり、観光客数も復帰時より約20倍にもなったとその成果を挙げる。その一方で、1人あたりの県民所得が全国平均の7割程度にとどまり、労働生産性が全国最下位であることや子供の貧困の問題などを指摘して、依然として解決すべき問題は多いとした。

 さらに、コロナ禍によってあらためて浮き彫りになった県経済の脆弱性を克服するため、「稼ぐ力」のある産業振興を図るとしてデジタルトランスフォーメーション(DX)や脱炭素などの取り組みを進めるとともに、主力の観光業においては、「世界一の健康長寿の島」というブランド力の回復やスポーツ産業や医療その他の産業分野との連携などを進めるとした。IT産業や製造業、物流産業の発展についても触れられている。

 このあたり具体的な取り組みの細目は別として、現状認識や取り組むべき方向性は県が6月1日に発表した振興計画の素案とそう変わらないであろう。自民党の沖縄振興調査会の提言に特徴的なのは、人材育成に力点が置かれていることだ。

 沖縄県の大学進学率は全国最下位であることが知られている。提言ではその背景には沖縄の家庭が置かれている厳しい経済状況があるものと考えられるとして、教育機会の確保のために必要な支援を進める必要があるとしている。沖縄では経済上の理由から進学を断念する若者が少なくなく、具体化に向けて期待したいところである。

 一方で、提言の原案にはあった、次期振興計画の根拠となる新たな沖縄振興特別措置法の期限を「法的措置を講ずる期間は10年としつつ」との文言が削られ、「適切な期間」とするのに止めた。自民党内には、「10年という期間ありきでは計画の策定の時に想定しなかったような課題が起きた時に機動的に対応できない」との声が強く、それに対応してのものだろう。

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