安全保障がなぜ次期沖縄振興計画に?

 

特例措置の継続は

 なお、提言では、沖縄の経済界から継続の強い要望があった、一括交付金や効率補助、酒税をはじめとする税制上の特例措置、そして沖縄振興開発金融公庫については、概ね継続を認めるよう盛り込まれている。7月29日に公明党が加藤勝信官房長官に提出した提言でも、振興計画の仕組みの延長や一連の特例措置の継続を求めており、経済界から安堵する声も聞かれる。

 ただし、肝心要の酒税の軽減措置については、<酒税の軽減措置については、事業者から自発的かつ積極的な提言がなされたことを受け止め、所要の見直しを行う必要がある>とされた。すでに6月の自民党沖縄振興調査会で、オリオンビールが「5年で卒業」、沖縄県酒造組合が「10年ほどかけてという覚悟」と、それぞれ一定期間の後に軽減措置の終了をやむなしとする考えを明らかにしていた。それが<自発的かつ積極的な提言がなされた>ということである。酒税の軽減措置については、今後、自民党の税制調査会でさらなる議論がされることになるが、復帰から50年を経ても特定の産業への優遇措置として続くことに必要性を疑問視する声も高まっており、もはや現状維持は難しいといえる。

県がまとめた計画素案に

 なお、6月に県が発表した振興計画の素案は、すでにHUB 沖縄で既報のとおり(「貢献」強調の次期振興計画素案 沖縄の10年間を築けるかhttps://hubokinawa.jp/archives/7482)、こちらも安全保障にこそ言及がないものの、沖縄の経済振興が日本経済全体に貢献するとの考え方が強調されたものとなっている。県もまた「いつまで沖縄を特別扱いするのか」との県外からの厳しい声に気を配らざるを得なかったのであろう。

 また、その内容について、「素案からは背景にある積み重ねが読み取れず、極めて薄っぺらなものになっている」「沖縄のこれからの10年をつくる計画にしては目玉がなくインパクトが薄い」。先の記事で県の元幹部がそう指摘するように、厳しい評価が少なくない。

 基地問題をめぐっても、素案の発表の5日前に玉城デニー知事が、沖縄に集中する在日米軍の専用施設を「50%以下」に削減すると具体的な数値目標を掲げてその実現を求める要請書を菅義偉首相宛に出しているが、素案にはその要望書に書かれた数値目標はどこにも出てこない。50%以下という数値はどこから出てきたものなのか。またどう実現する青写真を描いているのか。言いっ放しではなく、現実の政策に落とし込むことが必要なのは言うまでもない。

 7月28日には国の沖縄振興審議会総合部会専門委員会の最終報告案も取りまとめられた。次期振興計画をめぐる議論はこれから12月に向けていよいよ大詰めを迎えることになる。

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