参院選公開討論会 経済振興や基地問題で論戦 JC主催

 
公開討論会に参加した(左から)伊波洋一氏、古謝玄太氏、山本圭氏、金城竜郎氏=6月17日(日本青年会議所沖縄ブロック協議会提供)

 6月22日公示、7月10日投開票の第26回参議院議員選挙を前に、公益社団法人日本青年会議所沖縄ブロック協議会は6月17日、沖縄選挙区に立候補を予定している無所属現職の伊波洋一氏(70)、自民新人の古謝玄太氏(38)=公明推薦=、幸福実現党新人の金城竜郎氏(58)、NHK党新人の山本圭氏(42)の4氏を招き、公開討論会を開いた。争点となる経済振興や子どもの貧困対策、基地問題などについて論戦を交わした。事実上の一騎打ちが想定される伊波、古謝の両氏の主張を中心に、討論会の一部を紹介する。

 沖縄選挙区にはその他、参政党新人の河野禎史氏(48)が立候補を予定している。

 討論会の様子は日本青年会議所沖縄ブロック協議会のYouTubeチャンネルで生配信された。アーカイブ動画は以下。

実績や重点政策を強調

ーーー自己紹介および政策をお願いします。

質問に答える伊波洋一氏(日本青年会議所沖縄ブロック協議会のYouTubeより)

 伊波氏「県議会議員2期、宜野湾市長2期、参議院議員1期と、25年余りを沖縄で政治に関わって活動してきました。会派『沖縄の風』を結成して、県民の声を政府要請や交渉など様々な形で国に届け、国会質疑では6年間で約170回の質疑をさせていただきました。小泉自民党政権の構造改革以降、自治体職員の30%から40%が臨時非常勤職員となり、官製ワーキングプアとして社会問題化しました。現在も62万人おります。野党として強く求めたものが、臨時非常勤職員の任用と処遇を安定的に図るという意味から、2020年から会計年度任用職員制度が導入されました。初年度で1700億円、次年度以降は2400億円を毎年度、この会計年度任用職員の処遇改善のために地方財政措置させることができました。自治体の非正規職員の処遇が改善することは、実際サービスをアップすることに繋がります」

 古謝氏「大学時代から、いずれ沖縄に戻ってきて沖縄のために働きたい、そうした思いを持って総務省に入省して、国家公務員として10年以上働いてきました。東日本大震災の復興や沖縄振興にも携わってきました。昨年登録されたやんばる西表の世界自然遺産登録や、宜野湾市の西普天間住宅跡地に琉球大学の医学部を移転する健康医療拠点構想、こうしたプロジェクトを各省庁の取りまとめ役として担わせていただきました。私は3つの未来を掲げました。1つ目はしなやかで強い経済を持つ沖縄。やはり経済、産業をしっかり育てていく必要があります。2つ目が、誰もがチャレンジできる沖縄。若者だけではない、社会人になっても、高齢者になっても、いつでもチャレンジができる沖縄を目指したい。3つ目がみんなが笑顔でいられる沖縄です。子供たちの笑顔を守っていきたい。それが私の未来に対する原点です」

 山本氏「ご一緒させていただいている大先輩方のような政治経験は全くございませんので、党が一番に掲げる『NHKをぶっ壊す』について、党の公式サイトより紹介させていただきます。政党助成金を使って、NHKを見ないから受信料を払いたくない方向けに受信料を支払わないで済む制度、受信料不払いコールセンター、NHKとの裁判における各種のサポートなどを整備することができました。不合理な受信料制度を改めて、NHKスクランブル放送の実現を目指します。沖縄は受信料の支払いが全国で一番低いので、サポートしていきたいです」

 金城氏「2009年の衆院選で私が言ったことは北朝鮮のミサイル阻止、中国の脅威に対抗して抑止力を強化するということでした。ウクライナが明日の台湾、明日の沖縄にならないとも限らない。今日本はNATOと一緒にロシアに対して制裁を強く加えています。しかし、かつて安倍元総理がプーチン大統領と非常に親しくし、日露平和条約をもう少しでまとめようというところまでいった。それが今はマイナス状態に陥ってる。ウクライナの戦争に対し、和平への仲介を独自外交としてやるべきです。その上で、先島の防衛、抑止力強化を訴えていきます」

県民所得向上へ訴え

ーーー沖縄県民意識調査では「沖縄と本土に格差はあると考えますか」との問いに89%がその通りだと回答しました。沖縄と本土の経済格差問題についての考えを聞かせてください。

質問に答える古謝玄太氏(日本青年会議所沖縄ブロック協議会のYouTubeより)

 古謝氏「1人当たりの県民所得が2,391,000円で全国最下位であることをもって、格差があると答えてるのかなと思います。ただ本土と言っても、1位の東京都と46位の宮崎県とは全く状況が異なります。実際は東京と地方の格差があるということであって、本土と一括りにするというのは少し違うかなと思います。また、この計算方法は県民と県内企業が得た所得の合計を人口で割り戻したものなので、子供の数が多い沖縄は低くなる傾向になると思っています。じゃあ何もしなくていいのかっていうと、そういうことでは当然ありません。各産業の高付加価値化を図っていかなければなりません。農業分野でいえば6次産業化、ICTを活用したスマート農業の推進。漁業で言えば養殖業の推進。沖縄の基幹産業である観光業でいえば、富裕層の取り込みや関係人口の創出。新たな取り組みとして、付加価値の高い創薬などの健康産業を作っていくとか、海洋資源を活用したエネルギー産業を作るなど、様々な稼げる産業作りが必要だと考えています」

 山本氏「沖縄の方がそんなに自分たちの所得が低いと思っていることを知らなかったんです、実は。確かに地理的にも、製造業とかの経済活動にはどうしても不利なんだろうなというのを勉強して思ったところです。なので、1人1人の所得を増やしていく政策としてNHKの受信料をなくしたい。引き続きNHKをぶっ壊す方向で、私は頑張らせていただきたいと思います」

 金城氏「何年か前の世帯の平均年収が377万円で全国平均の7割ということで、格差ということを言えるのかもしれません。今年はエネルギー資源の物価高の直撃による格差の開きが非常に問題だと思います。その中で、消費税負担の逆進性がすごいです。まずは減税という形で、国民の生活に資することが可能です」

 伊波氏「経済格差はあります。1人当たり県民所得は全国平均の7割。法定最低賃金も上がっていますが、いまだに全国最下位です。役所の臨時職員の賃金がある程度地域の水準として提起されますので、それをアップすることで地域経済が上がっていくのではないかと思います。子供の相対的貧困率も29.9%で全国平均の約2.2倍なんです。沖縄県と他県の違いは、27年間に及んで米軍政権下に置かれたことです。その後も国土面積の0.6%の沖縄に米軍専用施設の70.3%が集中してるということがあります。米軍統治当時に米国民政府の強いドル政策の影響で製造業が育たず、基地依存の輸入型経済構造がつくられました。米軍は数少ない平坦な地域を基地として占有し、主要な交通路、住宅地を寸断して現在に至っています。軍用地が返還された那覇新都心や北中城のライカムは発展しています。翁長前知事が指摘したように、基地は県経済の最大の阻害要因です。そういうことを直視しながら、解決に向けて取り組んでいきたいと思います」

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