安全保障がなぜ次期沖縄振興計画に?

 

安全保障と沖縄振興のリンクか?

 この提言には原案の段階から地元紙が批判してきた。それは安全保障に言及されているからだ。提言では、沖縄が発展することは<総合的な安全保障としてアジア・太平洋地域の安定に資する>とし、<国境を担う沖縄において人々が安心して生活を営むことができる環境を作ることは、引き続き国の責務として取り組む重要課題である>とも述べている。

 離島振興をめぐっても、<我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、沖縄の離島が果たす役割は従来以上に重要になっている>と、ここでも安全保障について言及がなされ、<特別措置等の対象となる離島の範囲については、尖閣諸島も含め必要に応じた検討が求められる>とする。

尖閣 沖縄ニュースネット
尖閣諸島の魚釣島 内閣官房HPより

 ざっと説明を加えると、これまでは、手厚い補助を伴う沖縄振興計画を実施する理由として、沖縄戦で多くの犠牲者を出し、戦後も米軍統治が続いたという歴史的事情、本土から遠く離れ、東西1000キロ・南北400キロという広大な海域に多くの離島からなるという地理的事情、国内でも稀な亜熱帯地域にあるという自然的事情、在日米軍基地が集中するという社会的事情の4つの特殊事情が挙げられてきた。

 ところが、復帰から50年を迎え、有効求人倍率や1人あたりの県民所得などの指標で、全国最下位を脱しつつあるなど、本土との格差が縮まるなかで、「いつまで沖縄振興計画を続けるのか」との声が国民のなかにあるのも事実だ。自民党内では「振興計画を続けるには、国民の理解と共感が必要」との議論もあり、今年4月の沖縄振興調査会では小渕優子会長が振興計画の「単純延長は厳しい」との考え方を示していた。

 そうしたなかで、新たな振興計画を策定する根拠として、提言に盛り込まれたのが「安全保障」である。地元紙は「安全保障と沖縄振興をリンクさせている」と非難し、「安全保障を持ち出して、果たして豊かな住民生活に直接つながるのか」との県の幹部の声も伝えた。

 安全保障を提言に盛り込むよう強く要望したのは、自民党沖縄県連である。県連の幹部はその真意をこう話す。
「沖縄が日本にどんな貢献ができるのかと考えたときに、やはり安全保障だという結論になった。マスコミの批判は折り込み済みだが、格差が埋まりつつあるなかで、いつまででも『とにかくお金を出してくれ』という訳にはいかないのではないか」

 尖閣諸島が盛り込まれたことについても、「この島をどうするのか、沖縄ではなかなか現実的な議論が進まない実情がある。問題提起したかったというのが本音のところだ」と明かす。

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