泡盛出荷量が18年ぶりの増、ただし回復は未だ「道半ば」

 

業界の経営状況は悪化

 ただ、泡盛製造業の経営状況については厳しい局面が続く。21年度には営業利益1億円超の酒造所が復活する一方で、赤字は30社にのぼっている(※各種蔵書の決算月にバラつきがあり、製造・出荷数量の伸びと乖離がある)。さらに、泡盛製造業44社の営業利益をみると、19年度が2億8,900万円、20年度が2億9,000万円、そして21年度が5億500万円といずれも赤字で、悪化の一途をたどっている。

 営業利益が減少した酒造所について同組合は、コロナ禍の影響で居酒屋・バーなどからの受注の激減、資材高騰や広告・販売促進費用の増加、さらに売上の構成比が付加価値の高い古酒から巣ごもり・家飲み用の一般酒にシフトしたことなどを要因として挙げている。

 また、72年の本土復帰から50年間続いた酒税の特例措置が2032年までに段階的縮小を経て廃止されることも決まっていることもあり、業界に課された課題は少なくない。

 同組合は今後の取組について、想定ターゲットや飲用シーンなどを消費者の目線から考慮し、県内若年層を中心に据えた上で、県外・海外への需要拡大を図るとしている。具体的には、泡盛に馴染みの少ない20歳以上の大学生などを対象にした泡盛試飲イベントの開催、泡盛ドリンクカーの展開のほか、若年層が集まる県内イベントへの出店への取り組みなどを挙げた。

 「若者の酒離れ」「若者の泡盛離れ」といったフレーズがお馴染みになって久しいが、街場の飲酒シーンではクラフトジンやナチュラルワインなどを提供する店が増え、そこには若年層の姿も少なくない。古酒はもちろん、新酒でもストレートで飲める美味しさを担保した上で、食事とのペアリングやカクテルでの使用を踏まえた飲み方もパッケージングした伝え方を考慮すれば、若年層への波及は十分に見込めるだろう。

 琉球泡盛は蒸留酒として“世界中で沖縄でしか作られていない”という非常に大きな強みがある。その歴史とストーリーに確かな美味しさをきちんとあわせて届けることが出来れば、日本全国ひいては世界でスタンダードな選択肢の1つとなることも夢物語ではないはずだ。
 若手の造り手が時代に合わせた新たな動きを展開している酒造所もあり、この先の道に光は差し始めている。今後の飛躍に期待したい。

■関連リンク
復帰50年に沖縄県産米の泡盛醸造 忠孝酒造大城社長「泡盛業界の復帰は終わっていない」 ‖ HUB沖縄
泡盛「カリー春雨」に溶け込む矜持 香り高い味わいを生み出す酒造り ‖ HUB沖縄
“クセが凄い”杜氏が語る「津嘉山酒造所」の泡盛と歴史 ‖ HUB沖縄

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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