沖縄発の“社会を良くするビジネス”15組が登壇 島ラブ祭 ガレッジ川田さん「ずっと続いていくべき企画」

 

 沖縄県内でソーシャルビジネス(社会課題の解決を理念としたビジネスモデル)の実現に取り組む個人や団体15組が、自らのビジネスプランを発表する「島ラブ祭 ソーシャルビジネスコンテスト Powered by Yunus Social Business」が、4月15日に那覇市の琉球新報ホールで開催された。会場からの投票による「島ぜんぶでうむさんラブ賞」には、本人や家族が安心してその人の人生の最期を迎えられるように看取りのコーディネートなどを行う「看取り沖縄」の安里裕子さんが選ばれた。

 安里さんは「看取りの大切さ、人の最期の素晴らしさ、そこからたくさんの気づきがあるということ、まだ看取りには課題があるということをお話できる場を頂けて、本当にありがとうございました」とお礼を述べた。

安里さん「ご本人の最期の願いを叶えるお手伝いを」

 「島ラブ祭」は今年で2回目。「島ぜんぶでおーきな祭 – 第15回沖縄国際映画祭」の一環で開催された。司会はガレッジセール(川田広樹さん、ゴリさん)とよすみさんが務めた。

 「看取り沖縄」の安里さんは「全ての方々が安心して最期を迎えられる沖縄へ」とのビジョンを掲げてプレゼンした。

 社会の高齢化が進み「多死社会」となることで、病院で週末期ケアを受けることができない「看取り難民」が2030年には47万人に増加することが予測されていることを説明。家族が安心できるような介護サービスの提供の他、家族に寄り添いながら本人の最期の希望を叶えるための「看取りのコーディネート」を考案した。

 「この人に会いたい、あれを食べたいなど何でも良いんです。ご本人の最期の願いを叶えるお手伝いを全力でさせて頂きたいです」と声を詰まらせながら語りかけた。

「看取り沖縄」の安里さん

3か月間、メンターと二人三脚で

 参加者15組は、株式会社よしもとラフ&ピースと株式会社うむさんラボが主体となって、沖縄県のソーシャルビジネスを活性化させるプロジェクト「島ぜんぶでうむさんラブ」に1月下旬から参加。約3カ月間、メンター(伴走役)と二人三脚で、ビジネスモデルのブラッシュアップや起業家としてのマインドセット、プレゼン研修などに取り組んできた。

 吉本興業ホールディングスの大﨑洋会長は、身内の最期の際に病院と職場を行き来していたという過去を振り返りつつ、各組のビジネスアイデアについて「若い人からたくさん学んでいました。みなさんの代表として受け取ってください」と述べ、安里さんに記念品の泡盛を贈呈した。今後の沖縄のソーシャルビジネスの在り方について「思いや願いをもっとつなげて、みんなで大きくしていくのが優先すべき大切なことだと思っています」と重ねた。

吉本興業ホールディングスの大﨑洋会長

 各発表者の、社会を良くしたい、誰かの力になりたいという優しくも熱い思いに、会場は温かい雰囲気に包まれた。ガレッジセールの川田さんが「改めて素晴らしい企画です。前回も今回も感動しています。この企画こそずっと続いていくべきですよ」と強調する場面もあった。

全参加者のソーシャルビジネス紹介!

 看取り沖縄の他に登壇した14組と、そのビジネスの実例やアイデアを紹介する。(登壇順。⑭は看取り沖縄)

NPO法人たいようのえくぼ
仲村優香さん
『沖縄のママに届ける』

 子育てに奮闘するママに向けた、ママ目線のフリーペーパーを発行するNPO。行政や企業、NPO、個人らが発信する沖縄の子育て情報を1カ所に集約し、日々忙しく過ごす中でもほっこりしてもらえるようなポータルサイトを作る。

②ユレイ・アース
比嘉一男さん
『語り合い共創していく農業』

 耕作放棄地の多さや農業従事者の少なさから、パラレルワークとしての農業に着目。初期コストが安く手軽に育てることができ、食用から工業用までニーズの高いキャッサバ(タピオカ芋)の栽培とその拡大に取り組む。

Harmo沖縄
謝花うみさん、亀田みすずさん
『食を通じて沖縄を健康な島に!』

謝花うみさん

 肥満率が全国1位の沖縄県。管理栄養士の目線で、県産食材をふんだんに使い、栄養バランスに優れたジューシー(沖縄の炊き込みご飯)の「ちゃーがんじゅーしー」をプロデュース。沖縄の伝統的な食文化の発信も視野に入れる。

株式会社リテックフロー
瀬名波出さん
『流れの技術で循環型社会を作る』

 琉球大学発のベンチャー企業。排ガスから二酸化炭素を分離回収し、その二酸化炭素を活用した陸上海藻養殖技術で環境に優しく循環型の経済を実現していく。屋内での海ブドウ養殖に取り組んでいるとともに、障がい者雇用にもつなげている。

小川きぬさん
『才能を活かして「自分らしい働き方」ができる女性を増やす』

 結婚や出産などライフステージごとにキャリア選択を迫られることが多い女性に向けて、自分らしく働くためのキャリア支援サービスを打ち出す。自らの才能を自覚し、活かせるように、セミナーやコーチングを提供する。

fufu-hug
matoさん
『誰もが家族を持つ幸せを』

 性自認に関わらず誰もが幸せな“かぞく”を築ける未来をビジョンに掲げる。さまざまな家族の形を紹介するウェブサイトや関連イベントの運営などに取り組むほか、企業向けの研修を行うなどして、社会的なサービスと当事者のマッチングにつなげる。

⑦市川昌利さん
『厄介者、外来魚を食べる。』

 人間が持ち込んだ外来種が生態系のバランスを崩してしまっている中、駆除するだけではなく食料資源として活用することに着目。世界的に広く食べられているティラピアを使って、新たな沖縄の食文化の創出を目指す。

レアーズ
波平正司さん、波平美和子さん
『何かの「きっかけ」になれたら』

 不安や悩みを抱える子どもたちや保護者が気軽に相談してつながり合える場所として、自宅の一角を使って週1日の駄菓子屋や、体験活動ができる畑を運営している。さらなる活動展開のためにビジネスとしての自立を目指す。

⑨りっか
齋藤希さん
『こどもが安心して健康に大きくなる社会』

 部活動の遠征などで他府県に行く際、どうしても移動費や宿泊費などのコストがかさんでしまう離島県・沖縄の家庭。「部活の練習」と「地域のニーズに応える課外活動」を兼ねて派遣費用を子どもたち自ら生み出すプランを提案。

Organect合同会社
島袋優さん、福原海里さん
『セカイのベランダを森に』

福原海里さん

 農家の収益ポイントを増やす活動を行うスタートアップ。農家が使っている本格的な土を使った野菜栽培キットで、赤ちゃんの初めての離乳食を作る「そだべる」を開発・販売。成長に応じてさまざまな野菜の種を送る中期的なサービスでユーザーの食育にもつなげる。

⑪Goodna
島袋みことさん仲宗根かのんさん
『人も地球も経済もGoodな社会の実現』

(左から)島袋みことさん、仲宗根かのんさん

 地球環境を守るために何かを我慢する社会ではなく、ワクワクやこだわりを追求した上で地球環境の豊かさを実現する考え方を提唱。未活用資源を題材に、環境教育と自己探求学習を組み合わせた教育カリキュラムの実施などをする。

⑫Anidot
ラザフォードクリスティー雛子さん、芝崎義盛
『保護犬猫が平等に愛情を受けることのできる世界』

 犬猫の殺処分数ゼロを目指す上で、従来は多くの場合で犬猫の譲渡を受けることができない60歳以上への譲渡を実現するための仕組みを考案した高校生チーム。急な入院など事情の変化にも対応できる状況を整える。

⑬谷島隼斗さん
『子供達の選択肢を広げる為に。』

 不登校で中卒であるため仕事の選択肢が少なかった女性に出会い、力になろうとソーシャルビジネスを模索するも、女性本人が「私は幸せだ」と表明したことで「これは自分のエゴだった」と中断。今後ソーシャルビジネスの創出に挑戦する上で、自らのアプローチを明確にしていくとの決意を宣言した。

佐久間良太さん
『人は皆、誰かの希望になることができる』

 シンガーソングライター。幼い頃から病弱で、難病を患い挫折を経験してきた日々の中、心の支えになってきた「歌」を通して「人は皆、誰かの希望になることができる」というメッセージを発信。ステージ上ではアカペラで高音豊かな美声を披露した。

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長濱 良起

投稿者記事一覧

フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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