濃厚で香り豊かな多良間ラム ONE RUM第6弾はサスティナブルな1本

 
自社畑のサトウキビを収穫する仲里さん(今年3月撮影)

 楽しみ方については、シンプルにソーダで割ればフルーティな風味を堪能することができ、トニック・ウォーターで割っても美味しく飲めるという。また、カクテルにする場合にはラム・ベースの代表的なカクテル「ダイキリ」にすると、果実味と多良間黒糖の香味を存分に味わえることに加え、サトウキビジュースのようなニュアンスも感じられるとした。

 ラベルのパッケージデザインは、多良間島の伝統行事で国指定重要無形文化財でもある「八月踊り」をイメージした。多良間の人たちにヒアリングをした結果、島の文化として外せないものとして八月踊りが挙げられたという。仲里さんは「このボトルを手に取ることで、1人でも多くの人に島の文化を伝えることができたらいいなと考えてこのデザインにしました」と思いを語った。

「サスティナブル」がキーワード

 「ONE RUM」プロジェクトは「さとうきびで沖縄をもっと元気にする!」をスローガンに、原料選定、生産、流通に至るまで県内外から各分野のプロフェッショナルが結集して協力体制を構築する。
 原料を生産する農場(ファーム)から、最高の1杯が提供されるテーブルまでの一連の流れを研究対象とする「Farm to Table」の精神の下、カクテルやチョコレートとのペアリングなどさまざまなラムの楽しみ方の提案も包括した新たなアプローチで、「ラムの聖地」として沖縄を世界にアピールしていくことを目指している。

 プロジェクトに立ち上げから携わっている琉球大学農学部の平良東紀教授は、多良間島の黒糖と今回のラムについて「一言で言えば『サスティナブル』がキーワードになっていると思います」と述べる。蒸留酒の製造工程では、蒸留した後に残る不純物や余りの部分となる「蒸留残渣」が出てしまうことに言及。泡盛の残渣はもろみ酢などに活用することができる一方、ラム酒の残渣の再利用は難しかった。

 1回の仕込みで約6,000Lのもろみを作って蒸留し、実際にアルコールの液体として採れるのは約2,000Lだという。この計算だと4,000Lが廃液(=ダンダー)になるが、今回のようなダンダー仕込みによる製法を用いれば、発酵に再利用することが可能で「画期的な技術」だとした。
 また、多良間島のサトウキビ農家がエコファーマー認定を受けていることもサスティナブルを象徴する1つの要素だと強調した。

 同プロジェクトの「シングルアイランドシリーズ」では、離島8島の風土や生産方法の違いから生まれる黒糖の個性を引き出すラムを生産してきた。これまで伊平屋、与那国、波照間、粟国、小浜、そして今回の多良間が6本目で、残るは伊江と西表の2島となっている。来年2月に8島全てのボトルを発表予定で、その後8種のラムをブレンドした“良いトコ取り”の1本を開発予定だ。

 ラムは世界中で飲まれているゆえに、高品質かつ付加価値があるものを生産することができれば、すぐさま世界で勝負できる酒の1つだ。特産品であるサトウキビを通して、沖縄の土地や気候、風土、そして文化を表現する「ONE RUM」の可能性は無限大と言っていいほどに開かれている。今後の展開にワクワクが止まらない。

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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