「台湾有事」を対話で回避 政治立場や思想を超え“共通利益”へ

 

 中国と台湾の武力衝突、いわゆる「台湾有事」の危機の高まりが指摘される中、沖縄県内の有識者からなる「『台湾有事』を起こさせない・沖縄対話プロジェクト」が立ち上がり、活動を展開している。政治的な立場や意見・思想の違いを超えて対話し“共通の利益”である戦争回避につなげようというもの。10月15日には沖縄市民会館で発足イベントが開かれ、日本国際ボランティアセンター前代表理事の谷山博史氏は、アフガニスタンなど各国で長く活動してきた経験から「先進国と呼ばれる多くの国から見て『正しい戦争』『避けられなかった戦争』と言われている戦争は、別の観点から見るとそうではないということも現場に行くと分かってきます」と解説し、対話の重要性を述べた。

「保守も革新も 老いも若きも 国籍も関係ない」

 「保守も革新も 老いも若きも 国籍も関係ない」とのキャッチフレーズを掲げる同プロジェクト。活動期間はことし10月から来年9月までの1年間で、来年2月、4月、6月にそれぞれシンポジウムを開き、8月の「総括集会」を経て、9月にはアピール文を米国、中国、日本、台湾の各政府に届ける。

 共同代表は前岩波書店社長の岡本厚氏、琉球大学名誉教授の我部政明氏、沖縄国際大学教授の前泊博盛氏、元名桜大学教授の与那覇恵子氏の4人。その他、各界から実行委員や呼びかけ人として名を連ねる。

 同プロジェクトは「『小異を捨てて大同につく』の『大同』とは戦争を起こさせないという一点に尽きる」として、今後のシンポジウムでは沖縄からは米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対・容認の双方の立場の人を、台湾からは「一つの中国」に対する考え方の違う民進党系・国民党系の双方の立場の人を招く。

「戦争の原因を作ったまた別の原因というものがある」

 発足イベントでは各分野から有識者が次々と登壇した。県外からの登壇者はZoomを通して会場のスクリーン上で発言した。

 前述の谷山氏は、1990年にイラクが隣国クウェートを侵攻したことで起きた湾岸戦争で、石油問題を背景にアメリカに煽られたクウェートがイラクを挑発した関係性があったこと、2001年に始まったアフガニスタン戦争ではアメリカがタリバンとの交渉を一切拒否したことなどを指摘。「正義の戦争というものはありません。戦争の原因を作ったまた別の原因というものがある」と、物事の背景を多角的に見る重要性を説いた。関連して「中国を一方的に悪者扱いする中国脅威論は、分断を生み、戦争をあおることになります」と警鐘を鳴らした。

 共同通信特任論説委員の岡田充氏は「台湾有事は作られた危機である話をしたい」と切り出した。去年3月に米軍インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官(当時)が、アメリカ議会の公聴会で「2027年までに中国の台湾に対する武力行使が起きるだろう」と発言したことを紹介。さらにその翌4月には菅義偉首相と米バイデン大統領が日米首脳共同声明を出し、約半世紀ぶりに台湾問題を明記したことなどに触れながら「アメリカとしては台湾有事の危機をあおりつつ、中国の脅威を日本と沖縄の人に刷り込み、中国脅威で翼賛化する日本メディアを利用しながら、石垣島のミサイル基地化と、日本の軍事力強化、対中国への対応力の強化をうたったということになります」との見解を示した。

玉城愛氏「対話ってやっぱり認識変わりますね」

 元「辺野古」県民東京の会代表の元山仁士郎氏は英国・ロンドンから参加。「沖縄戦当時は『戦争に反対だ』『おかしい』と声を上げられる状況になかった。今だったら『こんな危機が煽られている状況はおかしいんじゃない?』ということもできると思います。海外の人ともZoomなどで話すことができる時代です。一人一人が動いて(状況を)変えていくことが、沖縄戦で犠牲になった人たちへの応答でもあり、過ちを繰り返さないために取れる責任の一つなのではないか」と話した。

 元オール沖縄共同代表の玉城愛氏は、学生時代に同世代の在日コリアンや台湾の若者と交流したことや、北朝鮮に交流で訪問した友人の報告会に参加したことから「やっぱり対話って、認識変わりますね。本当に必要だなと思います」と実感を込めて話した。

 元駐中国日本大使で日中友好協会会長の丹波宇一郎氏は、中国軍と台湾軍の圧倒的な戦力差を例に挙げ「このような状況の中で、台湾にも『戦った方がいい』と思う人は非常に少ないです。現状維持を望む人が大半を占めていると私は思います」と述べた。

 沖縄タイムス元社長の新川明氏は「私は91歳で先は長くないが、二度と沖縄で戦争を起こしてはならない」と対話の重要性に触れた上で「生まれたばかりの幼い命を全うしていける社会を保障することが、今を生きる私たちの務めだろうと思います」と述べた。

 その他、台湾在住のジャーナリスト本田義彦氏、沖縄物産企業連合会会長の宮城弘岩氏らも登壇した。

 同プロジェクトではクラウドファンディングを実施し、11月末までに活動資金を募っている。詳細はこちらのリンクまで。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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