沖縄をラムの聖地に 瑞穂酒造が「ONE RUM」プロジェクト始動
- 2020/12/16
- 食・観光
瑞穂酒造株式会社(玉那覇美佐子社長)が「サトウキビで沖縄をもっと元気にする」というテーマを掲げ、新しいラムの文化を創造するためのプロジェクトを開始した。
「ONE RUM」と名付けられたプロジェクトは、瑞穂酒造がリーダー企業となり、原料選定、生産、流通に至るまで県内外から各分野のプロフェッショナルが結集して協力体制を構築する。
原料を生産する農場(ファーム)から、最高の1杯が提供されるテーブルまでの一連の流れを研究対象とする「Farm to Table」の精神の下、カクテルやチョコレートとのペアリングなどさまざまなラムの楽しみ方の提案も包括した新たなアプローチで、「ラムの聖地」として沖縄を世界にアピールしていくことを目指す。
商品開発室長の仲里彬さんは「沖縄ならば世界一のラムを作ることができる可能性があります。県産のサトウキビを世界に広め、沖縄をラムの聖地にしたい」と意気込みを語る。現在、伊平屋島と与那国島の黒糖を使った試作を進めており、初期ロットは来春の発売を予定している。
原材料に焦点当てたラム作り
ラムはジン、テキーラ、ウイスキーに並び世界4大スピリッツと言われ、最も銘柄が多いとされる。サトウキビを砂糖に精製する過程で出る糖蜜などを原料に利用して作られている。しかし一方で、原材料としてのサトウキビそのものに焦点を当てて作られたラムは、世界でも少ないのが現状という。
「そこで『ONE RUM』では、品種も含めサトウキビと黒糖そのものにフォーカスし、沖縄だからこそできることを追求するのが大きなコンセプトの1つとなったんです」(仲里さん)
プロジェクトは商品開発にとどまらず、400年以上の歴史を持つ沖縄のサトウキビと黒糖の魅力を、瑞穂酒造の蒸留技術を生かして国内外の多くの人に伝えるために発足。生産者はもちろん、琉球大学や鹿児島大学などの研究機関も参加しており、学術的観点からもラムの製造を探究する。
さらに、デザインやブランディングによってラムの魅力を発信するための体制も整え、生産から提供までが一体となったシステムで長期的なスパンでの活動を見据えている。
魅力を発信する2本柱
製造するラムは、サトウキビの絞り汁を使用した「アグリコールラム」と様々な種類の黒糖から作る「黒糖ラム」の2種を柱とする。
アグリコールラムは、サトウキビの絞り汁をそのまま発酵させて蒸留するため、品種が持つ風味を最大限に味わえるのが特徴。ただし絞り汁は劣化が速く、産地で収穫期にしか作れないという制限があるために希少性が高い。一般的に流通しているラムの90%以上は砂糖を精製する際に出る副産物の廃糖蜜を原料としており、「トラディショナルラム」と呼ばれている。
仲里さんは「糖蜜で作るのはどこでもできるし、それゆえにキビの産地も追いづらい。だから、あくまで沖縄でしかできないものを追求する上で、品種にこだわって味と風味を高めることに意義があります」と強調する。