沖縄観光を名実ともに「基幹産業」にするためには 観光人材育成シンポジウム
- 2022/10/19
- 経済
感染対策を世界基準に
インバウンドの再開に関しては、国際線の復旧も徐々に始まっている現状を踏まえて下地氏が「コロナ前を思い出しながら、効果と課題を考えなければなりません」と前置きして、「しっかりとした収益を挙げるためのターゲティングをした取り組みを本格的に考える時期にきています」と話した。
さらに、世界的なクルーズの再開にも触れ「県内には5箇所のバースが整備されており、国際観光の動きの中でどのような受け入れが沖縄にできるのかという展開の仕方も重要になってきます」と説明した。
久保氏は脱炭素や地域文化へのリスペクトなどを配慮するSDGsの観点を意識しつつ「量→質」の転換を実践していくべきだと主張した。そのうえで、基調講演でも言及していた感染対策の安全性の面で「沖縄が全国でトップになるくらいの突き抜け方をした方がいいと思います」と提言。「第三者機関に認証してもらうことで世界水準まで持っていくことが出来れば、自ずと受け入れ対策の質向上にもつながることになるでしょう」と添えた。
また、クルーズ船については「入港隻数ではなく、入港によってどれだけ収益が上がったのかを基準にしなければいけません」と強調した。
行政と民間の「関係性の整理」が必要
最後の行政と民間団体、そしてDMO(観光地域づくり法人)との連携のあり方については、全体のまとめとしてそれぞれが意見を述べた。
久保氏はDMOについて「地域住民や企業が財源を一部負担してもいいと判断し、地域全体の利益のためにその存在価値を認めれば維持・存続すべき、という素朴な考え方に戻っていくという気がする」とコメントした。「その時に、行政側でも地域の手助けをする団体としての一定の価値を見出すことができれば、公的支援に踏み切ればいいと思う」と付け加えた。
「県とOCVBとの役割をどうするかということでずっと揺れ続けています。そして、財源面では不安定な状態に置かれているのがOCVBの実態です」と話し始めた下地氏。団体の維持・運営に関わる問題について議論すると「最終的には人材と財源の話に行き着く」という。そうした現状を踏まえて「関係性の整理をすることが重要でしょう」と強調した。
加えて、他分野との連携を深めることの大事さにも言及し、特にコロナ禍においては「医療界との連携の仕方が問われている」と指摘。「経済を含めた観光と医療との両輪で今後の展開を見据え、関係性を深めていくことがカギになってくると思います」とまとめた。
県内の観光客は日に日に増え、活気を取り戻しつつある。しかし一方で、観光関係者の人手不足やレンタカー不足が深刻化しており、コロナ禍のこの2年余りの間に“ウィズコロナ”を見据えた対策を十分に実施できていなかった結果が露呈しているのが現状と言わざるを得ない。沖縄観光を名実ともに「基幹産業」として成立させるための、実効的かつ具体的な施策を迅速に展開していかなければ、コロナ前からも山積み状態だった課題を克服できないし、さらなる歪みさえ生まれかねないだろう。
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