「農業×観光」新たな6次産業の形 Sunset Farm Okinawa

 

 池原さんが弟子入りしたのは、23歳の時だった。独立して経営者になりたいという意思を固めていた池原さん。知っている経営者は誰かと思いを巡らせた時に、唯一思い浮かべたのが父の顔だった。ここで初めて池原さんは、菊農家への一歩目を踏み出すこととなる。共に現場で汗を流すのは、誰がどう見ても「荒くれ者」の先輩10人ほどだ。

 「農業は、経営というよりは現場です」

 目の前の現場を一生懸命やっていれば、素直に結果に反映される世界だった。29歳で一度独立し、30歳の時に社長に就任した。電照菊では、少なくとも県内初めての株式会社を設立した。父から託されたバトンだ。

人気と知名度を集める農業

 農業分野は通常、生産量や生産高、生産物の品質などが指標となる。そこにSunset Farm Okinawaは生産者としての「人気」と「知名度」を加味してアクセルを踏んだ。

 「『電照菊と言えばすなわちSunset Farm』という状況にしたいというビジョンがあります。花が好きで、花が買いたいという方から(直接的に)支持してもらいたいです」

 新しい形の「農業の多角化」を切り開いていく。一般的に、多角的農業はさまざまな作物を栽培したり、畜産などを組み合わせたりすることを指してきた。Sunset Farmが目指す多角化は、ファーム自身の持つ価値を高めることだった。

 インスタグラムのフォロワーだけが入場できる仕組みは、何かを排他するためではなく、お客さんとより深い関係性を築きたいからだ。

 「密につながり合うことでコミュニケーションが生まれます。一つのコミュニティを作りたいですよね」

 一方向的に情報を提供するHPからインスタグラムのみに完全移行することも視野に入れている。それは、双方向のやり取りを重視したいという姿勢の表れだ。

 キクミネーションの可能性を語る時、池原さんは楽しそうな表情を見せる。

 「仕事には2つの打席が必要だと思っています。コツコツ確実にヒットを打っていく手堅い打席は菊を栽培して販売すること。確実にヒットを打てるようになりました。でも、これだけでは奇跡は起きません。1発ホームランを出せる打席が、キクミネーションなんです」

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長濱 良起

投稿者記事一覧

フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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