アジアを股に掛ける災害救助請負人(下)
- 2020/9/8
- 社会
台湾出身の黄春源さん(46)は、災害時に国境を超えて6か国が連携する国際機関「特定非営利活動法人 アジアパシフィックアライアンス(A-PAD)」(佐賀県)の緊急捜索救助チームのチーフだ。A-PAD所属の飛行機が佐賀県から救助先の東南アジアに向かう際の中継点となる沖縄で2018年から給油や援助物資の補給体制を整える活動を行っている。その黄さんへのインタビューの第二弾である。
(1回目はこちら。https://hubokinawa.jp/archives/1857)
日本のテレビ番組で
――黄さんを桃園DMAT(災害派遣医療チーム)立ち上げに駆り立てたテレビ番組とは?
「『世界ナゼそこに?日本人』です(注・日本での本放送は2013年10月28日)。神戸消防署を定年退職し夫婦でカンボジアを旅していた正井潔さんが、目の前で事故が起こっているのに救えない状況を目の当たりにし、無償でカンボジアに消防の学校を作り、救急救命体制を築いた番組でした。感動したのですぐにSNSで友達申請したら、返事が来てずっとやり取りをしていました。
桃園市消防署の本部長には、今いる消防団ではなく隊員は自分で選抜させてほしい。10年20年続けてきた団員にとって、隊長がまったく外部から落下傘で、しかも“若造”が来られては士気も上がりません。組織というのは排他的だから、一から作らせてくれと」
――排他的というのはどこも同じなんですね。本部長は首を縦に振ったんですか。
「ゴーサインが出ました。初代高度救助隊隊長としてすぐに隊員集めです。桃園市内にいる山岳救助、水難救助、地震対策などさまざまな領域のスペシャリスト一人ひとりの家庭を回り、配偶者にも頭を下げました。25人が集まりスタートしました。
正井さんの縁で兵庫県災害医療センターの中山伸一センター長に会いたいと言ったら『それならお安い御用。娘婿の父親です』とすぐに連絡を取ってくれました。チームの医師らを西日本のDMAT研修に派遣することができました」