軽石撤去、1時間で3200袋 与那原町民らLINEで集結

 

 10月、小笠原諸島の海底火山噴火で発生したとみられる大量の軽石が、沖縄県の海岸に漂着した。それは北部から南部に広がり、とうとう沖縄県の島全体が、セメントを流し込んだような灰色で覆われた。潮の流れと風向きで海上の軽石の量は変化するものの、陸上に上がった軽石は積もっていく一方だ。

与那原では1時間で約3200袋分

 軽石が浮かんだ海に漁船を出せばエンジンの故障に繋がり、出港することができない。漁業者にとって仕事を失う死活問題、消費者にとっても沖縄の美味しい魚介類の値段が高騰するため、手の届かないものになってしまう。沖縄各地から声が上がった。「僕たちに何が出来る?私たちの手で軽石を拾おう」

 11月14日に県内のユーチューバーが声をかけると、各地から400人が集まり本部漁港を清掃した。19日には、恩納村観光協会の呼びかけで130人がビーチの軽石撤去作業に参加し、800の土のう袋が出来上がった。そして20日には、与那原町のLINEで呼びかけた海岸線沿いの片付けボランティアが、緊急の呼びかけにもかかわらず町内外から200人以上も集合し、およそ1時間で3200の土のう袋が積み上がった。多くは与那原町民だったが、参加者の中には那覇市、宜野湾市、南城市からも駆けつけ、また、10以上の企業、園児、小学生たちも参加してくれた。

土のう袋をトラックに詰み上げる

 与那原町は、北部よりも漂着が遅かったとはいえ、11月6日には漁港に侵入、オイルフェンスを張り簡易的な防御はしたものの、日増しに軽石は増加、とうとう船は出せなくなった。漁業組合員が毎日作業しても撤去は追いつかない。照屋勉町長が声を上げた。「ぼくらの海は自分たちで守ろう。みんなで力を合わせよう!」

建設業者社員や学童の子どもたちも

 撤去作業は、海岸の危険度を考慮し4カ所に振り分け、足元が不安定な場所は建設業者の仲本工業の社員30人ほどが率先して担当した。仲本豊代表取締役社長は「自宅も海が目の前。毎日の軽石の状態にヤキモキしていた。町をあげてやりましょうと町長にもお願いした。自分たちの町は自分たちで守らないとね」と手を休めることなく話してくれた。「拾っても拾っても湧き出てくる感覚。それでも陸に上がった軽石を撤去すれば、満ち潮でも戻ることがないから全体的な軽石の量が減るはず。一回ではなく、何回も継続してやらないと」と言葉を続けた。

灰色の部分(海上)は全て軽石

 また、海岸の目の前に位置する「まぁる学童風」の児童13人も小さな手で軽石をすくって土のう袋に入れていた。引率の宮城美也子さん(52)は「毎週土曜日には、ここの海で遊ばせてもらっている。みんなできれいにしようねと話すと`地球を助けよう‘って言った子がいて。白い土嚢袋はサンタさんの袋だよと言ったこともあって、一生懸命拾ってくれている」と微笑んだ。小学1年生の伊佐茅波さんは「地球がおなか痛いって言っているの。私たちが綺麗にしてあげる。(軽石が)なくなったら`すっきりした~’って言うよ」と、軽石がいっぱい詰まった土のう袋をエイッと持ち上げて自慢げに見せてくれた。

伊佐茅波ちゃん

町長、郷土愛に感謝

 照屋町長は「みんなテレビや新聞報道などで関心があった。与那原町を愛する住民の心、郷土愛が少しでも力になれたらって思ってくれたと思う。一人の力は小さいけれどみんなでやれば大きくなる」と町民の協力に感謝した。そして「先週から状況を見ているが、実際拾ってみてこんなに多いと思わなかった。今日は第一弾だが、第二弾、三弾と続け行きたい」と今後の協力をお願いした。

照屋町長がたくさんの協力に感謝を述べた

 撤去作業は徐々に進んでいるが、今後の課題は処理問題だ。環境省は、毎年、海岸に流れ着いたごみなどの処理に対する補助金を自治体に配分している。しかし今回の軽石の漂着範囲は、今後も拡大する恐れがあることから、補正予算案に財源を追加計上すると見込まれている。照屋町長は「軽石を捨てるだけでなく、リサイクルして与那原のまちづくりに生かせるアートを創ったりするなど、何かアイデアがあれば、町役場に是非声を届けて欲しい」と呼びかけた。

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