【復帰50年】沖縄交通事情が一夜にして変わった「730」とレトロバス
- 2022/4/8
- 社会
沖縄が本土復帰を果たした1972年から6年後の1978年7月30日、県内の道路交通法が劇的に変わった。
それまではアメリカ統治下で車の進行方向が「右側通行」だったのに対し、たった一夜にして全く逆の「左側通行」に変更されたのだ。いわゆる「730(ナナサンマル)」である。
7月29日午後10時から県内の道路が全面通行止めとなり、翌30日の午前6時までの8時間で全ての切り替え作業が完了した。今の時代だと実際には無理なんじゃないかと思うほどの壮大なプロジェクトだ。
レトロバスの誕生秘話
本土復帰後は沖縄の施政権が日本政府に移り、道路交通法に対してもジュネーブ国際道路交通条約の「一国一交通制度」を遵守する形で左側通行に統一した。しかし大規模な道路切り替えのインフラプロジェクトが成功したところで、全てが完結するような程度の話ではない。
たった一夜にして進行方向が変わることは、車を運転する人々にも大きな影響と不安を与えた。また県内で販売されていた車のハンドル仕様も、この時期を機に左ハンドル車から右ハンドル車へとシフトしていくのだ。特にその当時県民の足として活躍していたバスが直面した苦労は類を見なかったという。
右側通行時には客の乗降口が歩道に面する車体の右側にあったが、進行方向が変わったことで乗降口の場所を変更する必要性が生じた。そこで県内の各バス会社は、政府から補助を受けつつ日本仕様の新車バス購入や既存バスの仕様改修を行い、一気に1,000台以上ものバス入れ替えを行ったという。
入れ替え台数があまりにも多かったため、沖縄バスは「三菱」、那覇交通は「いすゞ」、東陽バスは「日野」という形で各バス会社がそれぞれ別メーカーから車体を導入した。
この時代のバスは「730バス」と総称され、全国のバスファンからも根強い人気を持つお馴染みのレトロバスだ。
県内で実働40年を超えて今なお現役運行する730バスは、沖縄バスと東陽バスにそれぞれ1台ずつの計2台あり、毎年7月30日には特別ダイヤ運行もしている。またこの2台は毎週日曜日のみ定期運行しているので、興味のある方は運行路線と時刻を各バス会社に確認してみてほしい。