アジアを股に掛ける災害救助請負人(下)
- 2020/9/8
- 社会
なぜ山ん中なの?
――それで東京へ?
「それがいろいろ紆余曲折があって、災害訓練基地のある広島本部になるんです。私は結婚を控えていて後に妻になるマカオの恋人とは遠距離恋愛でした。彼女は安定した職業を捨てて来日すること自体大きな決断だったのですが、それが『東京でなくなぜ広島の山ん中なの?』と呆れられて、1か月ほどはまともに口も聞いてもらえませんでした」
――マカオ育ちの奥さんが山ん中で?
「私が先に行って4か月後に妻が来ました。私自身は祖父母が茶農家だったので山がすごく好きだったのですが、妻は都会育ちでなじめませんでした。私はスリランカを担当していたので出張も多く、広島には月に10日居られる程度。妻は見知らぬ土地でどんどん落ち込み体調を崩したこともあり、一番守らなければならない人を自分は守れてないことに気付いたのです」
――それで沖縄へ?
「A-PADはいったん辞めてある事業を立ち上げようとしたのですが、スリランカからの要請は継続してあるので『沖縄待機という形で活動を続けられないか』と大西さんから打診を受けました。A-PADの14人乗り飛行機は佐賀県にあるので、東南アジアに赴くには航続距離上、一度沖縄本島か石垣島で給油する必要があります。それと広島本部の救助犬を帯同する場合、関西国際空港で検疫に丸一日かかるので、その間に台湾に飛んで積み込む資機材を調達し、台湾から出発すれば早くて経費も安い。2018年に発生したロンボク島地震の際は、その作戦が功を奏しました」
――地の利を生かせる訳ですね。
「広島本部の最大の強みは救助犬チームです。台湾の民間レスキュー隊は、それ以外は備えています。ですからこの両者が合わされば、かなりの機動力を発揮できます。その調整が沖縄でできるんです。それと沖縄に来て良いことがありました。広島ではなかなかできなかった子どもができたのです。妻も子も今はゆったり過ごせています」
台湾とも連携を
——肌が合ったんですね。それは良かった。最後に、災害救助活動でアジア各国を訪れ、東京滞在経験もある黄さんからは、沖縄はどのように見えますか。
「沖縄は日本の端っこではなくて、日本の出口でありアジアの入り口でもあるので、日本の枠内で考えるのではなく、ダイナミックに考えた方がよいと思います。日本の枠内では、本土に対して気後れしてしまいがちですが、アジアに開かれた沖縄というアイデンティティーを持って、台湾とも連携してほしいですね」