県民は何を望んだのか 公文書でたどる復帰 「日本復帰と沖縄」展

 

沖縄のこれからを考えるために

 最後の「新生沖縄県の50年」は、復帰後から現在に続く時代を扱っており、振興計画の存在感が大きい。

 復帰当初の第1次から2001年の第3次までの振興計画では、基本的な方針が本土との「格差是正」を主軸として、道路や港湾、水道、ダムなどのインフラ整備に重点が置かれた。特に75年に「沖縄国際海洋博覧会」が開催された際には、大規模な開発事業が行われたことで文字通り桁違いの振興予算が投じられている。

 そして今年5月15日、沖縄県が第6次沖縄振興計画「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」を決定し、玉城デニー知事が岸田文雄首相に手交した。歴代の振興計画の方針や遂行事業を踏まえた上で新たな振興計画に目を通すと、沖縄がその時々に抱え、そして今まで持ち越してきている課題がより鮮明に浮かび上がるだろう。

 そのほか、展示室の中央には「深堀りコーナー」が設置されており、世界恐慌やアメリカ統治下での振興計画、本土で展開された沖縄返還運動、核密約など9つのテーマに関する資料も並んでおり、様々な視点から沖縄の歴史を立体的に捉えることができる。

生々しさを感じさせる手書きの書簡も展示されている

 本展示の大きな特徴は、琉球処分を起点にしたところだと言える。150年間というスパンで歴史を振り返ることで、復帰を迎えるまでに「ヤマト世」と「アメリカ世」という2つの国の統治下に置かれた時代を経たことによって、経済や産業を含む沖縄の基本的な社会構造が半ば強制的に“外部”に規定されてきた経緯がよく分かる

 そしてそのことによって生まれた歪みが、今現在の沖縄のいたる所で顕現してしまっていることも、改めて実感する。こうした歴史的経緯を踏まえて今現在の沖縄をきちんと受け止めて見渡すことが、“これからの沖縄”を考えるための一助になるのは間違いない。

 展示室の開館時間は午前9時~午後5時。休館日は月曜・祝日・慰霊の日で、土日は開館している。入場は無料だ。

■関連リンク
沖縄県公文書館 WEBサイト
【復帰50年】刻まれた眉間の「縦じわ」 初代沖縄県知事・屋良朝苗の苦悩とは ‖ HUB沖縄
【復帰50年】「沖縄は試されている」元副知事・上原良幸さんインタビュー ‖ HUB沖縄

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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