ウィズコロナ沖縄観光新時代 鍵を握るのは「高齢者と障がい者」

 

 「視覚障がいの方にとっては『その空間にいる』という感覚が最も大切です。沖縄美ら海水族館の大きな水槽の前に立って、水槽の壁に触りながら、横で付き添いの人がこう説明するんです。『今目の前にジンベイザメが来てますよ』。そうすると本人は『すごい、こんなに近い距離で見れるんだね』とイマジネーションの世界で感動できます」(親川さん)

 沖縄の匂いや音も、重要な観光コンテンツとなる。「沖縄は年中いろんな花が咲いていますよね。植物園では花々に触ったり匂いを嗅いだりして存分に沖縄を感じることができます。琉球舞踊も音楽と一緒に楽しんでもらえていますよ。踊り手の足音を聴いて、その人の体格まで“見えて”います」と話す。

 沖縄観光の定番である海だってそうだ。体中がキレイな海に包まれていること自体が素敵な観光体験であり、思い出になる。

 「ダイビングで魚が寄ってきた時には『魚が触ってくれた』と喜んでくれます。目が見えない方でも間違いなく楽しんでもらっています。一人で沖縄に来てバスであちこち移動する方だっています。そのような観光の在り方を障がい者の皆さんに学ぶことで、こちらとしても新しい視点を得ることができます」

多様な客層受け入れは「観光サービス向上の好機」

 長らく沖縄県の主要産業として位置付けられる観光業。沖縄県も観光立県を謳うなど、その自負は高いと言える。その一方で、観光客が増えても現場で働く人々の所得向上につながりにくいとの指摘も絶えない。

 沖縄県の観光振興基本計画の策定にも携わる親川さんは「観光従事者が幸せや誇りを感じられるかが大事です。所得にしっかり反映されると、次のステップを目指してサービスやホスピタリティの質が上がります。企業側が従業員を大切にして『観光業は稼げるんだ』という機運を作ることが必要です」と強調する。

 前述のように、多様なニーズに応えるという点で「高齢者や障がい者が沖縄に多く来てくれることは、沖縄観光のサービス向上につながる好機です」と語る親川さん。コロナ禍で一度大きく沈んだ観光業界。再び観光客が戻るまでに沖縄が何を学び何を準備できるのか。本当の意味で観光立県としての沖縄が試されている。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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