「総括、蓄積、検証、分析が無い」沖縄県政に今必要なこととは 元副知事・上原良幸さんインタビュー
- 2022/5/18
- 政治
中央官僚に対抗できる人材が必要
―具体的・現実的な成果として何を求めて、それから逆算してどういう手続を踏んで確実な成果にしていくか、という視点が無いと。
「国に“楯突く”んだったら、ルールに則った理屈を固めないといけないんです。情緒的な感情に任せてしまうと、賛同者からの拍手はもらえるけど、結果は出ない。こうした現状を考えた時に、今の沖縄に開発振興を担う国の役所があることがどういうことかを本気で考えないといけないんです。
沖縄県だけ特別措置を作ってもらっている状況をどう認識するのか。復帰50年過ぎてもまだ国に対して『忖度してくれ』と言うのか。そんな状況を見てたら、正直言って自分たちは何をやってきたのかと思う。もちろん僕も自分なりにやってきたが、現状は歯痒いし情けない状態だと思う。本当はもっと出来るし、もっとらなきゃならない」
―現状から改善に向かうために具体的に必要な要素は何でしょうか。
「数も質も官僚と対抗できるような人材が必要でしょう。それを育てなきゃいけない。沖縄みたいに色んな運動が起こったり必要だったりする場所ほど、そこはしっかりしないといけないですよ。
それと、東京(=国)との付き合いがある人間も必要。これは東京の人間とべったりになるという意味ではなくて、ちゃんと話が出来るという意味です。僕は仲井眞弘多県政の時、沖縄のために東京の人たちとバチバチ闘ってた。でも、それゆえに今もその頃の人たちとは“戦友”として家族ぐるみで付き合いありますよ。こうした関係性を築ける人がいないのは今の県政の問題でもあると思いますね」
県庁、県政を担う者の責務
―官僚に対抗できるような人材が育たないのはなぜですか?
「知事が変わると県政の上位の人事が全員変わるからですよ。僕は知事の保革が変わったのをまたいで県庁にいた時期もありましたが、その際には『あの人は前の県政の時にも良い思いをしてきた』『どっちにも良い顔をして』という風に後ろ指さされた。
でも実情はどっちの県政でもこき使われてきた(笑)。でも、そういう評価がまだあって、今でもまだずっと言う人もいる。正直言って『良い思いして』みたいなことを言ってる時点でアウト。レベルが低すぎる。行政を運営する上で極めて優秀な人材を、知事が変わったタイミングで平気で切ってしまうような体質が、今の沖縄県庁の体たらくの1番の原因ですよ。
県庁、県政を担う者の責務が何かということ、世の中がどうなっているかということをきちっと認識しないと。まず現状がどうなっていて、どんな課題があるのかということを皆で共有しないといけない。
その蓄積が必要なのに、それを集約できる人が不在なんです。いつまで経ってもその都度その都度で目の前課題に向かってきている。本来であれば、50年間どんな課題があったのかということを検証・分析しないといけないし、そのためにはどういう手段・手法があるのかということも議論して、色んな選択肢を検討しないといけない。その過程で、国との闘いもしないといけない。僕もほとんど殴り合いに近いようなこともやった(笑)。
そういうことを経て提示した選択肢の中から、最終的な意思決定を知事がする。それが健全なあり方だと思いますよ」
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