正念場のオール沖縄 有力経済人の離脱で革新陣営に衝撃

 
沖縄県庁

 11月までに予定される衆院選を前に、沖縄県内の政局に波紋が広がっている。辺野古の基地建設反対を掲げる勢力「オール沖縄」を支えてきた代表的な経済人である金秀グループの呉屋守將会長が、次期衆院選で「オール沖縄」候補を支援しない考えを表明したためだ。来年秋の県知事選や、玉城デニー知事の今後の県政運営にいかなる影響を及ぼすのか。
 なお、呉屋氏の去就については、9月18日掲載の<オール沖縄元共同代表の金秀会長、自民支持明言「次のステージに行くべき」>(https://hubokinawa.jp/archives/9925)も参照。

オール沖縄とは

 「オール沖縄」とは何か。
 沖縄県内では米軍輸送機オスプレイの普天間飛行場(宜野湾市)への配備に揺れた2012年頃から、このキーワードがたびたび登場するようになった。長く保守・革新に分かれて対立が続く沖縄で、超党派のオスプレイ配備反対の動きが出てきたことが契機になったと言える。その中心的な役割を担ったのが、「イデオロギーよりもアイデンティティー」などと訴えた当時の翁長雄志那覇市長(後の県知事)だった。

 この動きはやがて、普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画に反対する政治勢力を指すようになる。経済界の一部も支援に回り、特に「超党派」を象徴して二大巨頭となった重鎮が、かりゆしグループの平良朝敬会長(当時)と金秀グループの呉屋会長だった。オール沖縄勢力は14年10月の衆院選での4選挙区全てで自民候補を下し、11月の知事選で翁長氏が新知事に選ばれる原動力となる。

 呉屋会長はその後も企業を挙げてオール沖縄に協力してきた。15年4月には辺野古基地建設反対への支援を呼びかける「辺野古基金」が創設され、呉屋会長はその共同代表に就任し、事務局を那覇市の金秀本社に設置。同年12月にはオール沖縄の取り組みを推進する運動体「オール沖縄会議」が立ち上がり、呉屋氏はここでも共同代表の一人に名を連ねる。金秀グループの新入社員には研修の一環として辺野古の抗議現場を訪問させるなど、支援に熱を上げた。

 ただ、オール沖縄を標榜したことで、金秀グループの経営の柱である建設業は影響を受けていたようだ。辺野古の関連工事には関われず、沖縄県が本島東海岸で計画していたMICE施設建設事業に参画するも、政府が採算性を疑問視して待ったをかけ、計画は遅々として進まなかった。

綻び、亀裂

 革新政党や労組が中心で辺野古の基地建設反対という確固たる方針を掲げるオール沖縄だが、経済対策など基地問題以外の分野の政策はファジーにならざるを得ない。基地問題が主要争点となる知事選や国政選挙では強みを発揮する一方で、県内市長選ではオール沖縄勢力の敗北が続き、「辺野古一本槍」戦法の限界ゆえ綻びや亀裂が生じるようになる。

 呉屋会長がオール沖縄勢力と距離を置くきっかけになったのが、18年2月の名護市長選だ。市長選では辺野古反対を掲げ3期目を目指す現職が、政府与党の強力なバックアップを受けた新人に大差で敗れた。これを受けて呉屋会長は同年3月、「オール沖縄会議」の共同代表を辞任すると表明。「政党色が強くなりすぎた」と周辺に語り、強まる革新色に嫌気を募らせたという。この翌月には、金秀と並んでオール沖縄を支える一翼を担ってきたかりゆしグループも同会議から脱退を決める。

名護市役所

 時期を同じくして、オール沖縄の保革を乗り越える象徴となってきた金秀とかりゆしの離脱。オール沖縄の退潮を裏付けたが、この時点で呉屋会長は完全には決別したわけではない。18年8月の翁長知事の逝去に伴う9月の知事選では、呉屋会長は後継の玉城デニー候補の選挙組織を率いてオール沖縄を支えた。玉城氏の知事就任後も後援会長を引き受けてきたが、20年9月には「新型コロナウイルスの影響を踏まえて本業に回帰する」として辞任。関係者によると、この時期になると呉屋会長は自民党本部の幹部らに接触し、協力を申し出る動きを見せるようになっていたという。

正念場

 「(今後は)辺野古基地問題を争点に戦う選挙はちょっと違う。同じことを何度も何度も繰り返すのはよくない。次のステージに行くべきだ」

 呉屋会長は21年11月までにある衆院選を前にこう強調し、オール沖縄系候補は支援せず、特に沖縄1区では自民候補を推す考えを表明した。沖縄との対立を深めてきた安倍−菅政権が終焉し、新たな首相による代替わりを迎えるタイミングでもあり、現実主義的な経済人らしい判断が働いたのだろう。

 呉屋氏の転換は今後の沖縄政局にどう影響していくのか。衆院沖縄1区では呉屋氏がこれまで支援してきた共産候補と、保守系2人の三つ巴の選挙戦が続く。「金秀が支援先を乗り換えると言っても、これまでの選挙戦からどの程度の票があるかはクエスチョンマークだ。こちらへの効果は限定的だが、オール沖縄側が精神的な柱となってきた存在を失った意味を考えるべきだろう」。そう指摘するのは1区の自民関係者だ。

 県内では衆院選後の年明け以降、名護市長選をはじめとする首長選や夏の参院選が続き、秋には県内政局の天王山たる知事選を控える。それだけに呉屋氏の離脱で「超党派」としての看板が色あせるオール沖縄勢力にとっては大きな衝撃だ。

 「オール沖縄」とは何だったのか、もう過去形で総括する時期に差し掛かっているのか。早速、来る衆院選がそれを占う試金石となる。

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