平井鳥取県知事のスピーチはなぜ沖縄県民の心に刺さったのか 復帰50年式典

 

 沖縄と東京をオンラインでつないで5月15日に開催された「沖縄復帰50周年記念式典」。式典中の厳かな雰囲気の中、突如歌声が響いた。「てぃんさぐぬ花や 爪先に染みてぃ 親ぬゆしぐとぅや 肝に染みり」-。声の主は全国知事会会長として出席し、来賓挨拶でマイクの前に立っていた平井伸治鳥取県知事。会場からは大きな拍手が起こり、その日のハイライトともなった他、式典中継を見ていた県民からもSNS上などで賞賛の声が上がっていた。平井知事のスピーチはなぜ県民の心を打ったのか。

「ハイサイ、グスーヨー」から始まる3分半

 平井知事のスピーチの滑り出しは「ハイサイ、グスーヨー。チューウガナビラ」だった。これはウチナーグチ(沖縄本島中南部の言葉)で「こんにちはみなさん。ご機嫌いかがですか?」で、近年では沖縄の政治家が公式なスピーチで言う場合も多い。当日も、先に式辞で壇上に立った玉城デニー沖縄県知事が同じフレーズであいさつしていた。

 ここまでは、筆者自身も正直なところ、サービス精神の一つに過ぎないとも思っていたし、ちょっとした不自然ささえ感じたほどだった。関西人じゃない人の関西弁を関西人が聞くと変な気持ちになる、といった感じだろうか。

真っ先に述べた哀悼の意

 ひとしきり冒頭のあいさつを終え、話が本編に入った時だった。

先の大戦により、沖縄で失われた尊い御霊に改めて衷心より哀悼の意を表します。

 他の登壇者から「悲惨な戦争で尊い命が失われたこと」についての言及は時折あった中で、平井知事は「沖縄戦の戦没者に対する哀悼の意」を真っすぐ言葉に出したのだった。「復帰50年」の根底にある「77年前の戦争」に立ち返って、弔った。

 太平洋戦争で「本土決戦までの時間稼ぎ」とされ、地上戦の舞台になった沖縄。全国知事会という、いわゆる「ヤマト、内地、県外」の各地を代表する会の長がこのような言葉を寄せてくれたことに、使い古された表現かもしれないが「本土と沖縄の温度差」が縮まったような気がした。

沖縄県営平和祈念公園・平和の火(https://098free.com/より)

歌声が乗せた真摯さ

 沖縄戦の早期の戦闘終結を主張し、避難誘導や食料確保の先頭に立って尽力した当時の沖縄県知事・島田叡氏への敬意を示し「島田知事の志を継ぎ、平和な世界を築くとともに、沖縄の発展を果たさねばなりません」と述べた直後だった。

 冒頭の場面。一呼吸置いて、ウチナーグチの歌詞を一言一言確かめるように、丁寧に歌い始めた。大きなホールならではの残響音と会場の静寂さが、さらに歌声を響かせた。

 この曲は『てぃんさぐぬ花』といって、沖縄県民なら老若男女問わず親しまれているわらべ歌だ。筆者も幼稚園児の時に、クラスのみんなで歌った覚えがある。

Print Friendly, PDF & Email
次ページ:

1

2

関連記事

おすすめ記事

  1.  慰霊の日が近づくと、沖縄戦を語り継ぐことの大切さが毎年のように課題として挙げられる。戦後…
  2.  7月10日投開票の参議院議員選挙が22日、公示される。沖縄選挙区は現職の伊波洋一氏(70…
  3.  「月桃ゆれて 花咲けば 夏のたよりは 南風」-。鎮魂や反戦、平和への願いを込めた海勢頭豊…
  4.  国際通りの真ん中に位置するビル。エレベータを降りて2、3歩足を進めると、100席余のテー…
  5.  求人サイト「オキナビ」の運営などを行う株式会社プロアライアンス(大城佑斗代表)と沖縄県内…

特集記事

  1. 県庁
     今後10年の沖縄振興の指針となる新たな振興計画「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」(第6…
  2.  5月15日に東京と沖縄をオンラインで繋いで開かれた「沖縄復帰50周年記念式典」。壇上の大…
  3. 「沖縄県だけ特別措置を作ってもらっている現状をどう認識するのか。復帰50年を過ぎてもまだ国…
ページ上部へ戻る ページ下部へ移動 ホームへ戻る 前の記事へ 次の記事へ