平井鳥取県知事のスピーチはなぜ沖縄県民の心に刺さったのか 復帰50年式典
- 2022/5/17
- 社会
沖縄と東京をオンラインでつないで5月15日に開催された「沖縄復帰50周年記念式典」。式典中の厳かな雰囲気の中、突如歌声が響いた。「てぃんさぐぬ花や 爪先に染みてぃ 親ぬゆしぐとぅや 肝に染みり」-。声の主は全国知事会会長として出席し、来賓挨拶でマイクの前に立っていた平井伸治鳥取県知事。会場からは大きな拍手が起こり、その日のハイライトともなった他、式典中継を見ていた県民からもSNS上などで賞賛の声が上がっていた。平井知事のスピーチはなぜ県民の心を打ったのか。
「ハイサイ、グスーヨー」から始まる3分半
平井知事のスピーチの滑り出しは「ハイサイ、グスーヨー。チューウガナビラ」だった。これはウチナーグチ(沖縄本島中南部の言葉)で「こんにちはみなさん。ご機嫌いかがですか?」で、近年では沖縄の政治家が公式なスピーチで言う場合も多い。当日も、先に式辞で壇上に立った玉城デニー沖縄県知事が同じフレーズであいさつしていた。
ここまでは、筆者自身も正直なところ、サービス精神の一つに過ぎないとも思っていたし、ちょっとした不自然ささえ感じたほどだった。関西人じゃない人の関西弁を関西人が聞くと変な気持ちになる、といった感じだろうか。
真っ先に述べた哀悼の意
ひとしきり冒頭のあいさつを終え、話が本編に入った時だった。
先の大戦により、沖縄で失われた尊い御霊に改めて衷心より哀悼の意を表します。
他の登壇者から「悲惨な戦争で尊い命が失われたこと」についての言及は時折あった中で、平井知事は「沖縄戦の戦没者に対する哀悼の意」を真っすぐ言葉に出したのだった。「復帰50年」の根底にある「77年前の戦争」に立ち返って、弔った。
太平洋戦争で「本土決戦までの時間稼ぎ」とされ、地上戦の舞台になった沖縄。全国知事会という、いわゆる「ヤマト、内地、県外」の各地を代表する会の長がこのような言葉を寄せてくれたことに、使い古された表現かもしれないが「本土と沖縄の温度差」が縮まったような気がした。
歌声が乗せた真摯さ
沖縄戦の早期の戦闘終結を主張し、避難誘導や食料確保の先頭に立って尽力した当時の沖縄県知事・島田叡氏への敬意を示し「島田知事の志を継ぎ、平和な世界を築くとともに、沖縄の発展を果たさねばなりません」と述べた直後だった。
冒頭の場面。一呼吸置いて、ウチナーグチの歌詞を一言一言確かめるように、丁寧に歌い始めた。大きなホールならではの残響音と会場の静寂さが、さらに歌声を響かせた。
この曲は『てぃんさぐぬ花』といって、沖縄県民なら老若男女問わず親しまれているわらべ歌だ。筆者も幼稚園児の時に、クラスのみんなで歌った覚えがある。