人口増に向け「地域ぐるみ」 沖縄県離島振興協議会の宮里哲会長

 
沖縄県離島振興協議会会長の宮里哲座間味村長

 沖縄県は東西約1000㌔、南北約400㌔の広大な海域に160(面積が1㌶・100㍍×100㍍以上)の島々が点在している。このうち、県は沖縄本島や沖縄本島と橋などで連結されている11島の計12島を除く148の島を「離島」と位置付けている。2018年1月時点で37の有人離島が存在する。

 宮古毎日新聞では、新型コロナウイルスの感染拡大で疲弊した県経済の復興に向け、重要な要素の一つとなる離島振興策の推進について、現状の課題や観光のあり方、今後の方針などを県離島振興協議会会長の宮里哲座間味村長に聞いた。

沖縄県の離島が抱える現状の課題について

 各離島は大きさも沖縄本島からの距離もそれぞれ違うこともあり、抱える課題も異なる。確実に言えるのは、県全体では人口が減少する状況ではないものの、離島では人口減少が始まっている。今後、この人口減少をどう食い止めるかということが、重要なポイントの一つになると考えている。

 特に、高校がない離島では、子どもが高校に進学する際に母親が兄妹と一緒に沖縄本島などに住み、働きながら子育てをするという家庭が多くあった。私は、父親が一人で地元に残るという意味で、当時は「逆単身赴任」という言い方をしていた。これは単なる人口減少という問題だけではなく、子どもたちの故郷に対する思いが削がれるという側面もあり、大きな課題だと認識していた。

 そこで県に一括交付金を活用して、高校がない離島の子供たちのために学生寮をつくってほしいと訴え、2016年1月に120の寮室を備えた県立離島児童生徒支援センター「群星(むるぶし)寮」を那覇市に開所した。

 群星寮が完成したことで、子どもたちは中学校を卒業するまでは生まれた島で生活ができる環境をつくることができたほか、子どもたちの故郷への思いが削がれることもなくなった。子どもの不安と親の経済的負担の軽減につながり、人口減少の歯止めの一つとして、大きな成果を挙げたと考えている。

コロナ禍での離島観光

 医療環境が脆弱な小さな離島では、診療所に医師1人、看護師1人という体制で24時間いろんな対応をしていることを踏まえると、観光客には申し訳ないが『(島に)来ないでほしい』と言わざるを得なかったというのが実情だった。島の人たちも仕方ないという話になっていたと思っている。

 ただ、観光客が来ないことによる経済損失は相当なものなので、そういった意味ではやはり来てほしい。一方で、新型コロナウイルスが島で蔓延した場合のことを考えると非常につらいという状況がずっと続いていた。

国内客については、回復してきている

 離島全体の話はまだできないが、座間味村でいうと、今年の7月以降、観光客が盛り返しており、コロナ禍前の8割程度まで戻りつつあるのではないかと考えている。

 観光事業者の方々も、各自治体でもそうだが、マスク着用を促すなど、基本的な感染予防対策を徹底して、観光客の皆さんを迎える環境は整いつつある。

沖縄観光の「量」から「質」への転換

 県内の入域観光客数は、2018年度に1000万人を超えたが、これは沖縄にはそれだけの魅力があり、観光客を呼べる要素は非常に多いということだ。ある程度の「量」は必要だと思うが、倍にする必要はない。

 観光客1人当たりの消費額を上げるためには、宿泊日数を増やす必要がある。そのためには人材育成や、仕組みづくりが重要な要素となる。これは沖縄全体の課題だが、オーバーツーリズムなど「渋滞=経済損失」という視点を含めて、抜本的な改革をしっかり行う必要がある。

 クルーズ船への期待も大きい。ホテルが海に浮かんでいる訳なので、新たな客層だと見ている。乗船客は比較的年配の方が多く、富裕層のみを取り込むということではないが、例えば欧米では「アクティブシニア」という考え方があり、寄港地ごとにダイビングやトレッキングなどのアウトドアを楽しむスタイルもあるという意味でも非常に期待は大きい。

多様性に富む離島の魅力発信と得意分野の生かし方

 消費額を増やす意味においても、離島の魅力をどのように発信し、どう伝えるかということはとても大きなポイントになる。ターゲットを絞ったPR活動などを含めて、観光客に島の魅力が伝われば各離島を巡る「アイランドホッピング」につながる可能性があり、消費額を増やすということにおいても離島の役割は非常に大きく、県全体の観光に資する離島観光になる。

 一番大切なことは、やはり強みをどう伸ばすかということ。農業が強い地域では、農業を伸ばしながら「グリーンツーリズム」で観光客を呼ぶ。また、漁業を生かした「ブルーツーリズム」として観光を伸ばしていくなど、いろんな可能性を考えていくことは非常に重要だ。

座間味村での取り組み

 座間味村では、外から入ってくる人たちと地元が手を取り合っている。例えば、地元の人と結婚する移住者もいるし、移住者同士で結婚して新たな世帯を持つ環境が整っている。村には座間味島・阿嘉島・慶留間島などがあり、幼稚園と小中学校には約130人の子どもたちがいる。このうち、両親がウチナーンチュという家庭は3割程度で、それだけ移住者が多いということだ。

 時間をかけて互いの信頼関係を築き、仲良くしている。地域の伝統行事を守りながら、さまざまな行事にも参加するといった状況なので、移住者もさらに住みやすくなったという意味で、移住先進地じゃないかと思っている。

今後の離島振興の方向性について

 国力と同じで離島の力というのは、やはり魅力がたくさんあっても、住む人がいなければ意味がない。まずは、人口を増やすことが、産業を強くすることにつながるということだと考える。

 観光地に観光客が増えれば『ここで起業・独立して所帯を持つぞ』と思わせることができる。そのような仕組みをつくっていくことが、今後の重要な方向性になるのではないか。

 観光産業がメイン、農業がメイン、漁業がメインと、島ごとにそれぞれの特徴がある。リーディング産業をしっかりと伸ばしながら、それ以外の産業が育ちやすい環境をつくることこそが『島に住みたい』と思わせることにつながる。若者が(島で)起業したいという気持ちにさせるために「島ぐるみ・地域ぐるみ」で取り組む必要がある。

(記事・写真 宮古毎日新聞)


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