再発防止策の強化を 首里城火災で報告書
- 2021/4/9
- 社会
2020年10月31日未明に発生して首里城正殿などを全焼させた火災について、このほど第三者委員会の報告書が取りまとめられた。報告書では、火災の原因について「電気トラブルが出火原因であることは否定できない」としたほか、防災センター機能の一元化、消防活動を支援する設備の新設などについて必要性を強調した。
同火災をめぐっては、那覇市消防局が出火は同日午前2時33分ごろで、火元は正殿1階北側東寄り付近と判定している。一方で、出火原因については同市消防局、県警ともに特定に到らなかった。
同委員会は、報告書で「出火原因を確定させるだけの根拠を見出すことは困難だった」としながらも「出火時に(正殿1階で)通電していた予備ブレーカーにつながっていた電気設備または電気機器のトラブルが出火原因である可能性は否定できない」と分析した。
今後については、自動的に火災を消火・抑制するスプリンクラー設備の設置が望ましいとした。ただ、「過去に失われた建築物の忠実な復元に価値を置く考え方からはスプリンクラー等の現代設備の設置に消極的な意見もあり得る。前回の復元時にスプリンクラーを設置しなかったことは、必ずしも不合理な判断とは言えない」とも指摘した。
防災機能センター機能が分散
報告書では、首里城公園内の防災センター機能について、城郭内を担当する奉神門2階の中央監視室と城郭外のエリアを担う首里杜館の2カ所に分かれており、首里杜館ではさらに地下2階防災センターと地下中2階中央監視室に分かれていたことも指摘した。
奉神門2階の中央監視室と首里杜館地下2階中央監視室では火災の発生を監視する装置の情報を相互に確認することができたが、今回の火災で最初に異常を通知した人感センサーや、監視カメラの情報は即時の共有がなかったという。
このほか、火災発生当時に同公園内にいた警備員と監視員の合計7人のうち、仮眠中5人や城郭外を巡回していた1人を除くと、持ち場に待機していたのは実質的に1人だった。報告書では、警備員と監視員などによる初期消火活動の課題について「延焼拡大の原因ではない」としながらも、「指揮命令系統が不明確だった」とした。
消防活動を阻む要因の改善を
報告書は、「⾸⾥城⽕災では、多くの消防活動障害が浮き彫りとなり、⾸⾥城の消防活動には⼤きな困難が伴うことを思い知った。⾸⾥城では、消防活動に⼗分な消防⽔利の確保が確保されていたとは⾔い難い」とも指摘した。
その上で、「⾸⾥城における消防活動をより円滑にするための設備として、⼗分な消防⽔利の確保のため、防⽕⽔槽・消⽕⽔槽の増設や消⽕栓の新設が望まれる。消防隊が迅速に消⽕活動を開始できるよう、連結送⽔管を敷設し、消防ポンプ⾞が集結する駐⾞場に送⽔⼝を設け、ポンプ⾞による圧送で⽔利中継することが有効」と改善の必要性を訴えた。
このほか、正殿近くまで緊急⾞両が移動できるよう、⽊曳⾨や近習詰所下部からの動線確保についても検討の余地があるとも指摘した。首里城は、城壁や門、階段などが障害となり、城郭内の中心部に消防車両が入れない構造となっている。
(記事・写真 宮古毎日新聞)