「シン・ニホン」安宅氏が示す「未来への方程式」OISTフォーラム

 
OIST HPより

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)は、日本が科学技術分野で世界をリードしていく道筋などを議論するオンラインイベント「OIST FORUM 2021」を開催した。「科学技術立国・日本をリブートせよ」とのテーマで、3月2日から4日まで、各界で活躍する計12人が登壇、計約2000人が視聴した。共催はNewsPicks。初日は、著書「シン・ニホン」で知られる慶應義塾大学環境情報学部教授でYahoo!株式会社チーフストラテジーオフィサーの安宅和人氏が、日本の人材育成の在り方について「0から1を作り出す“異人”」を生みだす重要性などを提唱した。

世界での競争力落ち込む日本

 安宅氏は「科学・技術分野における論文数」で、日本が2004年は中国、16年にはインドにそれぞれ抜かれていることを指摘。さらに、「大学の世界ランキング」で、これまでアジアでは基本的に1位をキープしていた東京大学が16年からランクを下げ、19年時点で6位に転落していることなどを挙げ、日本の国際的な競争力が弱まっていることを示した。学術論文に参照された数を示す「サイテーション数」は韓国と同水準で「人口にして約2.5倍のアドバンテージがあるのに並ばれている」と問題点を指摘した。

 その上で、中国やインドの世界全体に占めるGDPが近年急激に伸びていることから「世界における経済やイノベーションの重心が(1800年代初頭までGDPで世界2強だった)中国とインドに戻ってきている」と述べ「確変モードの面白い時代」と表現。「中国語が世界語となるのは自明だ」とした。

生み出せ「ヤバイ人」

 安宅氏は「未来の方程式」を「未来=夢×技術×デザイン」と描く。そこで求められる人材は「刷新を起こす人」だという。

 これまでの日本社会で有利とされてきたのは「みんなが走る競争(資格試験や有名企業入社など)で強い人」「科学、工学、法律など個別領域の専門家」「自分でなんでもできるすごい人」だったが、これからは「あまり多くの人が目指さない領域のいくつかでヤバイ人」「夢を描き、複数の領域をつないで形にする人」「どんな話題でもそれぞれ自分が頼れるすごい人を知っている人」が求められるとした。

 これらを踏まえて安宅氏は、人材育成モデルについて「『ヤバイ人』を生み出すことの重要性を踏まえて、本質的に刷新する必要がある」と言及する。

OIST HPより

 課題はあくまで“伸びしろ”だとし、第一に挙げたのは「理工系の学生の数自体が足りない」ことだ。2012年には理工系学生が日本は23%である一方、ドイツや韓国では63%に達する現状を挙げ「圧倒的に少ない」と警鐘を鳴らす。

 さらに、貧困層の増大、女性の社会進出の遅れなどを挙げ「解き放たれていない才能」が多くあることを指摘。特に主要大学での学生の女性率が低く、東京大学では2割程度であることから「この多様性の無さが、何か面白いことを生み出す人が足りていない一つの背景であることはほぼ確実だと思う」と断じ、日本社会の現状に疑問を投げかけた。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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