前宮古島市長に有罪判決 陸自用地巡る贈収賄事件
- 2022/2/22
- 社会
宮古島市上野の陸上自衛隊駐屯地の用地取得をめぐる収賄事件で那覇地裁は22日、収賄側の前宮古島市長、下地敏彦被告(76)に対して懲役3年、執行猶予5年、追徴金600万円の有罪判決を言い渡した。下地被告は、記者団に対し「しっかりと判決文を見てから、控訴するかどうか決めたい」と述べた。
判決では、争点となっていた下地被告が市長在職時に行った陸自受け入れ表明に職務性があるかについて、「『地域における事務』の執行として市長の職務権限に属するものと認められ、『職務』に該当する」とした。
下地被告は、在職中の2016年6月20日に市議会で陸自配備について受け入れを表明した。防衛省は同22日に、島内にあったゴルフ場を駐屯地用地として取得手続きを進めると前市長に伝達している。
21年1月の市長選で、4期目を目指した下地被告は落選。その後、同年5月12日、陸自の受け入れを表明することで、駐屯地が建設されたゴルフ場の土地売却を可能にし、謝礼と知りながら現金を受け取ったとして逮捕された。贈賄側の元会社社長は、起訴内容を認め、同年9月に懲役1年6月、執行猶予3年の判決が言い渡されている。
同年12月3日の論告求刑で検察側は、現金を賄賂との認識で受け取ったなどとし、「市に止まらず広く社会全体に及ぼした影響は大きく、被告人の刑事責任は重い」とし懲役3年、追徴金600万円を求刑した。
一方、弁護側は同月17日の最終弁論で、現金は謝礼ではなく、市長である自身との関係修復を図るためのご機嫌取りとの認識とした上で、「受け入れ表明は、市長の職務権限に含まれていない」などと無罪を主張していた。
22日の判決で、小野裕信裁判長は、「金員の供与は被告人の職務である(陸自受け入れ)表明の対価であり、被告人もこれを認識していたと合理的な疑いを入れる余地なく認めることができる。収賄罪が成立すると判断した」と説明した。
その上で、量刑について「犯行は市長の責務、市政の公正さや廉潔性に対する市民の期待や信頼を大きく裏切るものであった」と強調した一方、現金の供与を期待していたとまでは伺えないなど実刑が不可避とは言いがたいとし、「刑事責任を明確にした上、刑の執行を猶予することが相当だと判断した」とした。
下地被告はこれまでの公判で、現金600 万円は政治資金として受け取ったとの認識を示しており、政治資金の届け出をしていなかったことについては「大変申し訳なかったと思う」と述べていた。事務局に政治資金として同資金を渡したが、その際に誰からの資金かは話さなかったことも明らかにし、同様の処理が多かったとも述べている。
賄賂性の認識について小野裁判長は、表明で結果的に破産を免れ、大金を得て感謝しているであろう贈賄側が、島外で面会の約束をして現金を渡そうとしたことなどを踏まえ、「現金が表明への謝礼の趣旨を含むものと認識し、受け取らない意思決定をすることは十分可能だった」とし、賄賂性に対する被告の故意も推認できるとした。
22日の公判では、傍聴していた市民が「恥を知れ」などと大声をあげ、裁判長から「これ以上発言すると退廷させる」と注意を受ける一幕もあった。
(記事・写真 宮古毎日新聞)