漁港工事で伊平屋村が前村長を提訴 村議会が全会一致で承認
- 2022/2/24
- 社会
伊平屋村議会(金城信光議長)は22日に招集した臨時会で、8680万円の損害賠償などを求めて、前村長の伊礼幸雄氏(74)を提訴する議案を全会一致で承認した。伊平屋村(名嘉律夫村長)は3月以降、那覇地裁に提訴する見通しで、現職村長が前村長を訴える異例の運びとなった。
伊礼氏は3期目の2018年、「漁村地域整備交付金事業」を活用して田名漁港の浚渫工事を発注した。総事業費は1億6300万円。交付金は国が70%の1億2225万円、県が25%の3260万円、村が5%の815万円。
工期は18年4月から19年3月までだったが、工期中の進捗状況は全体の4割で、出来高に到達していなかったのにもかかわらず、村は業者への前払い金を出来高に含めて県に請求していたことが明らかになった。
その後、村は財政調整積立基金を取り崩して出来高払い分の補助金8680万円の返済に充て、県と国に返還した。これによって工事は継続され、7月に完工した。この経緯を巡り、住民8人が21年2月、村監査委員会に対し、伊礼村長(当時)が適切な施工管理を職員に指示しなかったのは「職務義務違反」にあたるとして、同氏に損害賠償を求める住民監査請求を提出した。
監査委「村民への裏切りと取られても仕方ない」
これを受けて村監査委員は同年4月、「村民への裏切り行為と受け取られても仕方ない」として、住民の請求額通り8680万円を村に支払うよう伊礼氏に勧告した。
監査委員が問題視したのは、補助金の割り当て内示から着工まで7カ月を要したこと。県の補助金交付要綱に違反していると指摘した。また、県への申請文書に村の担当職員が無断で村長印を押したことについて、「公文書の偽造であり、刑事事件に当たる。発覚した時点で告発すべきだった」と、黙殺した村の隠蔽体質にも斬りこんだ。
同勧告は、同年5月26日までに必要な措置を講じるよう伊礼氏に求めていた。しかし伊礼氏はこれに応じなかったとして、住民8人は翌27日、那覇地裁に住民訴訟を起こした。
訴状はこのように指摘する。「村長自ら事業の進捗を問い合わせず、事業の遅れなどに気付かないまま時間を経過させたことや、村長印の管理を怠り職員が無断で使用できる状況を放置したことなどは職務義務違反である」。その上で、村に対し8680万円を伊礼氏に損害賠償請求するよう求めた。
そんな中で迎えた村長選。8月24日に告示され29日に投開票され、村議5期目で副議長だった新人の名嘉氏が464票を獲得し、4選を目指す伊礼氏を76票差で破って当選した。
新村長の誕生に伴い、8人の住民は現行のままでは新村長が被告になっているとして、12月16日那覇地裁に訴訟の取り下げを求め、受理されていた。一方で村は1月7日、伊礼氏に損害金の賠償を通告したが、伊礼氏は2月1日、応じない旨、文書で回答していた。
22日に招集した村議会の臨時会で、8680万円の損害賠償などを求めて伊礼氏を提訴する議案が全会一致で承認されたことで、今後は法廷での争いとなる。