「平和基軸の環境醸成を」 沖縄県の玉城知事、復帰50年で会見

 
会見で、本土復帰50年などについて発言する玉城知事=9日、県庁

 沖縄県の玉城デニー知事は9日、本土復帰50年の15日を前に会見を開き、復帰50年や沖縄振興への思いを語った。沖縄が目指すべき道について、新たな沖縄振興計画を進めていくとした上で、「平和だからこそ観光産業が維持され、多国間における経済関係が構築され、人と人の交流が行われる。平和を基軸とした環境を醸成していくことが重要だ」との思いを示した。

 玉城知事は、50年で沖縄振興の諸施策の推進がさまざまな成果を上げてきたが、自立型経済の構築はまだ道半ばだと強調。「観光、商工、農林水産業の各分野が連携し、産業横断的なマーケティング力を強化する方向性に力を入れていく」と説明した。

 基地問題については、「基地の整理縮小が思うように進んでいないのは、国と国との政府間協議だけで進めている影響がある」とし、日米両政府に沖縄県を加えた協議の場が必要だとの考えを示した。

 9月11日に行われる県知事選の争点については、「最大の争点は、新型コロナの感染拡大で疲弊した県経済の回復から成長にどう取り組むかだ」と述べた。子供の貧困問題の解消や、離島振興、米軍基地問題も重要だとした。

 台湾有事の懸念について問われた玉城知事は、「アジア太平洋地域の平和と安定は、県民の生命財産を守る上では極めて重要。有事に発展することはあってはならない」と述べた。

 そのほか、知事と記者団のやりとりは以下の通り(抜粋)

―復帰前に体験したことで、沖縄の社会問題について後々考える上で影響を与えた出来事はあるか

 小学校5年生のころ1970年12月に、米兵のひき逃げ事件を発端にコザ騒動があった。その日の夜は、人の叫ぶ声や走る足音、パトカーのサイレンで、ものすごく騒々しかった。翌日、車がひっくり返されて燃やされていて、ゴムの焼けるにおいやオイルの焼けるにおいが漂っていた。

 今回、それを改めて思い出したのが、ロシアに攻撃されたウクライナのマリウポリの街。映像を見たが、ちょうど僕があの時に見た焼け焦げた車体(の姿)と、重なるように見えて思い出した。

―復帰時に先人たちが描いた沖縄になっているか

 5次に渡る沖縄振興計画などによって、さまざまな社会基盤の整備が進み、観光関連産業なども発展してきた。1971年11月、本土復帰に当たり作成された復帰措置に関する建議書を踏まえて考えると、全国水準以上の整備環境は整ってきたが、県民一人当たり所得は全国の7割で、復帰以降一貫して全国最下位辺りの位置にとどまる。県民が求めてきた自立型経済の構築は道半ばだ。

 米軍基地の縮小・返還も沖縄に在沖米軍専用施設面積の70.3%が集中することは、本土並みという復帰当時に県民が期待した状況にはなっていない。

―復帰後生まれが多くなっている。そういった世代に、どう復帰の意味や歴史を伝えていくか

 今の沖縄は、戦後長きにわたって先人たちが自治権の獲得や祖国復帰運動などを通し、将来を担う子や孫たちのためにウチナーンチュの誇りを貫いた延長にあると思う。

 県内はもとより国内外に対し、沖縄のこれまでの発展の歩みや将来の可能性を発信していくために復帰記念事業を実施する。若い世代の皆さんに、先人たちの労苦と知恵を学んでいただき、次代を担う自分たちが、どういう沖縄を作っていきたいのか、自分たちにとって誇りある豊かさとは何であるかなど、具体的に考えていくような取り組みを進めていきたい。

―日本全体で復帰50年を考える意義について

 これまでも沖縄の置かれている基地負担の現状、日米地位協定の現状は沖縄だけの問題でなく、日本国民全体で考えて安全保障についてどういう方針を持つべきかということを、政府に対し、問題提起するなどの方向性で(国民も)受け止めていただきたいということをトークキャラバンなどで呼び掛けてきた。引き続き、さまざまな情報発信を続けていきたい。

―基地と振興のリンク論に関する政府側の発言などについて。

 基地が返還され、その跡地利用をすることが沖縄の振興につながるということであれば、それはリンクしているという考え方には納得できる。基地に賛成するか反対するかで、沖縄の振興という国の重要な政策における予算の増減があるということは考えら

(記事・写真 宮古毎日新聞)


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