人流の復活本格化は「Go To待ち」 観光客はまだ戻ってこないのか
- 2021/11/14
- 経済
沖縄県が10月に発表した入域観光客数を見てみると、2021年度上半期は136万4,200人。前年同期比では39万1,100人(40.2%)増となっている。とはいうものの、前年はコロナ真っ只中で緊急事態宣言措置もあって過去最大の減少幅だったため、増加に転じたとは言え依然として楽観できる数字ではない。
ホテル組合の新型コロナについての影響調査では、19~21年にかけて平均稼働率は下降し続けている。前述したように、修学旅行や団体客のキャンセルが相次ぎ“Go To待ち”の状態でもあり、人流が復活するまでは補助事業による下支えを希望する声も強い。一方で、緊急事態宣言の解除でビジネスによる長期利用客が増え、一部では多少なりとも稼働率が上がったホテルもある。
「中には70%台で稼働しているホテルもありますが、コロナ禍で値段を下げているからという事情も大きいんです。今後通常価格に戻した時に果たしてお客様が戻るかどうかという問題も出てきます」と中村さんは指摘する。その上で「これからは値段とクオリティの安定化が大きなテーマになってくるでしょうね」と話した。
遠いインバウンド再開
他方、インバウンドに関しては日本が入国制限措置を継続しているため、県内を訪れる外国人観光客数は依然としてゼロが並ぶ。ワクチン接収が普及したことで、海外では観光も含めた社会経済活動の正常化を見据えてワクチンパスポートも活用され始めている。日本でも今月、隔離期間などについての緩和した条件付きの入国も認めたが、手続きの煩雑さが多々指摘されており、観光目的の入国のハードルはまだ高いと言わざるを得ない。
県内でも、インバウンドに関連した動きは鈍い。観光関係者によると「忘れられないために」中国や韓国、台湾、香港などのアジア向けに沖縄への誘客プロモーションは続けているものの、具体的な再開時期についての目処も、そのための施策についても目立った動きはないという。
また、那覇空港は以前から検疫体制の脆弱さが指摘されており、検疫官の増援を求めるなどそもそもの受け入れ体制をコロナを踏まえたものにアップデートすべきという意見もあり、再開への道のりは遠い。
コロナ禍を経て、沖縄の観光が1000万人を超えた時のような活況を再び迎えるのはすぐには難しいだろう。「観光立県」を掲げ急激な成長を遂げる一方で、オーバーツーリズムや観光業の収益低迷が指摘され続けていた実情もある。官民それぞれの役割を明確化し、連携しつつ感染対策・観光振興を両立させた上での“持続可能な”経済活動を推し進めるための体制構築を急がなければならない。
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