慰霊の日に糸満生まれのラッパーKZ「ケンカを避けるHIPHOP文化」

 

怒りのパワーを力に変えて

 約20年前、地元のコミュニティラジオに出演していた芸能関係者の発言に衝撃を受けた。「糸満には文化がない」

 「しに(とても)カチンときましたよ。糸満にはハーレーもあるし、大綱引きもあるし、青年会の活動も盛んです。むしろ文化がある方です」

 ただ一方で「文化がない」とする人の考えもしっかりと受け止めた。「ならば自分たちでも糸満の文化を作っていこうと思いました。それが原動力となったので『馬鹿野郎!ありがとう!』って気持ちでした」

 そのイメージからKZが作り上げた楽曲が『DO YA SELF』(2007)だ。曲名には「自分たちでやろう」という意味が含まれている。

 糸満を音楽で盛り上げたいのと気持ちで、レンタルスペースに機材を持ち込んでイベント会場を作り、ラッパーもDJもバンドマンも一緒になってムーブメントを作り上げていった。
 「200人ぐらいお客さんが集まったんですよ。そんなに来るの?ってぐらい。どんどんイベントをしていくうちに、糸満だけで100人ぐらいラッパーがいました」

 「地元に文化がない」と評された“怒りのパワー”を、プラス方向に昇華させたことが、まさにヒップホップイズムの賜物だった。

 「そこからさらに、シリアスで社会的な内容もラップに乗せるようになっていきました」と話すKZは『 “大きな輪”-MADE韻OKINAWA-』で「どこにも負けない文化 それが地下深く湧き上がり噴火」、最新作の『ろくでなしBLUES』では「良いものは良い ダメなものはダメ しかしマイノリティも一歩踏み出せ」と、心の深くからすくい上げてきた言葉を紡ぎ出す。

平和を話しやすい雰囲気を

 「決して慰霊の日だけが機会ではないですが、この日があるからこそ、せめて1年に一度はみんなが戦争や平和のことを意識することができます。子や孫の世代が大変なことになる前に、というのは親になって初めて思える気持ちだということにも気づきました」

 戦争や平和を歌詞に書くことには、生半可な気持ちで挑めない。しかし「難しいかもしれないですけど、もっと肩の力を抜いて平和について話し合えるような状況を作っていかなければならない、と思っています」と話し、次世代へと平和のバトンをつないでいく。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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