「安全安心な島実現に全力」 沖縄戦全戦没者追悼式
- 2021/6/23
- 社会
地上戦に巻き込まれた住民ら20万人余が犠牲となった悲惨な沖縄戦から76年目の「慰霊の日」となる23日、最後の激戦地となった糸満市摩文仁の平和祈念公園で沖縄全戦没者追悼式(主催・県、県議会)が行われた。新型コロナウイルスの影響で規模が縮小され式典参列者は関係者36人となったが、同公園には花束を手に多くの県民らが訪れ戦没者の冥福を祈った。
平和宣言で、玉城知事は「沖縄戦の実相と教訓を次世代に伝え続け、人類社会の平和と安寧を願い国際平和の実現に貢献できる、安全安心で幸福が実感できる島を目指し全身全霊で取り組んでいく」と強調した。
また、沖縄方言と英語で「地球上からあらゆる戦をなくすこと。一人一人が平和を願う心をつないでいくこと。食料を分かち合い、希望と信頼を育み、笑顔に囲まれて一生を遂げられること。そのための努力を私たちから未来の子どもたちへつなごう」と述べた。
米軍普天間飛行場の辺野古移設については、「県を含めた積極的な協議の場を作り、辺野古新基地建設が唯一の解決策との考えにとらわれず、新たな在沖米軍の整理・縮小のためのロードマップの作成と目に見える形での沖縄の過重な基地負担の解消を図ってほしい」と日米両政府に求めた。
式典後には、戦没者の遺骨混入の懸念がある沖縄本島南部地域の土砂を移設工事に使用することについて、「今なお遺骨が眠る地域の土砂の使用について、多くの県民の皆さんが、県にしっかりとした対応を求めている。今後、どういう内容で対応できるのかを真摯(しんし)に検討していきたい」と述べた。
菅義偉首相は、新型コロナの感染拡大を防止するため、ビデオメッセージで「引き続き、できることはすべて行うとの方針の下、沖縄の基地負担の軽減に向け、一つ一つ確実に結果を出していく決意。来年5月には沖縄の本土復帰50年という大きな節目を迎える。沖縄のさらなる発展に向け、現行の沖縄振興特別措置法期限後の沖縄振興のあり方について、しっかり検討を進めていく」と語った。
平和への誓い「みるく世の謳(うた)」
今年の「平和の詩」朗読では、宮古島市立西辺中学校2年の上原美春さんが、自作の「みるく世の謳(うた)」で力強く平和への誓いを述べた。
上原さんは、一昨年に姪が生まれたことをきっかけに平和の大切さを意識したという。朗読後、平和への取り組みについて「時が経つにつれ体験者が減っていく。私たちも目をつぶってはいられないこと。私も姪たちと一緒に戦争について考え、いま目の前にある問題を一つ一つ解決して恒久平和につなげていきたい」と述べた。
4年前、姉の愛音さん(当時宮古高校3年)が平和の詩を朗読したことで、「朗読が、私の夢だった」という上原さん。「とても緊張した。私の平和に対する思いも伝えることができて良かった」と感想を話した。
その上で、「いま世界を見ると、まだまだ戦争や飢餓がある。今ある私たちの普通の日常はありがたいものだということ、人の命の大切さや平和な世界のありがたさなどを発信できたらいいなと思った」と述べた。
「みるく世の謳」には、宮古島の民謡「豊年の歌」の一節も盛り込み、朗読の途中で朗らかな声で歌い上げた。上原さんは、「歌の辺りは、平和にしていこうということを強く訴えるために、声を大きくした」と説明した。
また、詩に「命」が多く出てくることについて、「私たちの世界を良くしていくためには、まず命の限り生きて、命の大切さを後世に伝えていくことが大事。私自身も命を大切にしていきたい」と述べた。式典の最中は大雨だったが、上原さんは「御霊たちが私にエールを送ってくれていると感じていた」と語った。
(記事・写真 宮古毎日新聞)