黒糖の在庫問題で窮状訴え 県黒砂糖工業会
- 2021/6/24
- 経済
県黒砂糖工業会(会長・西村憲波照間製糖社長)は22日、那覇市内で会見し、サトウキビの増産や新型コロナの影響などで黒糖在庫が増えたとして、県内8製糖工場の窮状を訴えた。会見では「来期以降の操業は厳しい」との意見も出され、国や県に支援を求めたほか、県民にも県産黒糖の消費拡大を呼び掛けた。
県内では、8つの島(伊平屋島、伊江島、粟国島、多良間島、小浜島、西表島、波照間島、与那国島)で、それぞれ特徴を持った黒砂糖が生産されている。
ただ、沖縄産の黒糖は安価な輸入黒糖などとの競合により販売が伸び悩んで年間需要量が約7500トンにとどまるのに対し、直近5年間は7800~9600トンの生産が続いたことで徐々に在庫が積み上がってきた。
新型コロナの影響などもあり、現状では工場分、流通問屋分を合計すると約1万6000トンの在庫があるという。
在庫は、金額にすると約37~38億円分で、このうち工場在庫分は約20億円となっている。同会では「年間の売り上げに匹敵する金額。当然、資金繰りは厳しい」と窮状を説明した。
西村会長は「黒糖販売の収入が十分に確保できない中、農家に原料代を支払っており経営は厳しい状況。在庫問題が早期に解消されない限り、来期以降の操業は極めて困難な状況に陥る」と訴えた。
さらに、「今後、黒糖工場の持続が困難な状況となった場合、サトウキビ産業や、離島地域の住民生活、経済と定住社会はどうなるのか危惧している」とも強調した。
その上で「県民には、日常生活の中で少しでも多くの黒糖を使用し、消費拡大に協力してほしい。国、県は早期解決の支援策を講じていただきたい」と述べ、国や県が毎年一定量の黒糖を買い上げるなどして減産時に備える施策が必要とした。
県黒砂糖工業会の副会長を務める普天間朝重JAおきなわ理事長は「サトウキビは制度品目だが、農家が生計を立てられても工場の経営が成り立たなければ、制度のどこかに欠陥があるということ。もう一度見直すべきだ」と指摘した。
また、「過去に2度、大減産があった。そういう可能性に備えて国や県が調整在庫を持つなど、増産をみんなで喜べる産業にしなければならない」とも強調した。
宮古製糖の渡久山和男社長は、多良間島にある製糖工場の状況に触れた上で、「この在庫問題が解消できなければ、来期以降の操業ができるかどうかという不安を抱えている。残された時間は少ない。ぜひ皆さんの力添えをお願いしたい」と述べた。
(記事・写真・図 宮古毎日新聞)