【戦後76年 慰霊の日】「舞台と一緒に生きる」演劇で伝える沖縄戦

 
公演「島口説」のワンシーン(エーシーオー沖縄提供)

「演劇を見ることは、その空間にいることで“舞台と一緒に生きてもらえる”んです。その経験から受け取ってもらえるものはとてもたくさんあると思います」と演劇表現の独自性について語るのは、演劇やフェスティバルの舞台企画・制作をしている「エーシーオー沖縄」代表の下山久さん。

 戦争や米軍の土地接収、コザ騒動など苦難の沖縄戦後史を1人の女性の半生から浮かび上がらせる「島口説(しまくどぅち)」、沖縄戦の最中で戦禍を逃れようと洞穴に避難した人々の生と死を描いた「洞窟(ガマ)」など、沖縄の戦争や歴史を主題にした演劇を多数手掛け、平和の大切さや未来への希望を込めた表現を観客に届けている。

 昨年から今年にかけて、新型コロナウイルスの影響で双方の公演で中止が相次いだ。「洞窟」の再演は現時点では未定だが、下山さんは「また絶対にやりたい。やらないといけない」と上演への意欲を失ってはない。「島口説」は緊急事態宣言の期間が終わった後、7月15日からの上演を予定しており、出演者たちは稽古を重ねている。

沖縄戦と演劇について語るエーシーオー沖縄代表の下山久さん(右)と職員の友利奈緒子さん

初演から脚本を変えないことの意味

 本土復帰の年に沖縄に来た際に強烈なカルチャーショックを受けたという下山さん。その時に味わった衝撃から「沖縄の文化をたくさんの人に紹介したい」という強い気持ちに駆られて以来、県内の文化芸術に携わってきた。エーシーオー沖縄が様々な舞台を生み出していく原動力は「沖縄に生きることに向き合い続け、沖縄に生きる人々の心を舞台を通して伝えたい」という思いだと説明する。

 前述の演劇「島口説」の初演は1979年の東京・池袋だった。脚本を手掛けた劇作家の謝名元慶福さんが名優・北島角子さんにあてて書いた一人芝居で、ユーモアを交えて戦中・戦後の沖縄を語る強く逞しい女性を描いた。舞台は注目を集め、以降7年間かけて沖縄も含めて日本全国、そして海外にも足をのばし、303回の公演を重ねた。

「初演の時はまだ復帰から間もないし、沖縄ブームとかも当然まだまだなかったので、沖縄がどんな所なのかほとんど知られてませんでした。それに一人芝居という演劇スタイルもそこまで一般的ではなかったので、二重のインパクトがあったんだと思いますよ」(下山さん)

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