【戦後76年 慰霊の日】「舞台と一緒に生きる」演劇で伝える沖縄戦

 
公演「島口説」のワンシーン(エーシーオー沖縄提供)

 2017年に北島さんが亡くなり、その1年後の2018年に追悼も込めて32年ぶりに「島口説」を上演した。北島さんの後を継いで主役の女性を演じたのは、県内でお笑いタレントとして活躍している「泉&やよい」の2人だ。

 舞台の復活にあたって、1人芝居を2人芝居にするためのテクニカルな面での変更はあったが、ストーリーの根幹を成す脚本にはほとんど手を加えなかったという。下山さんは苦難にさらされ続けてきた沖縄が、今現在も初演の時と根本的に変わっていない現状を憂う。

「国との関係性や様々な差別なども含めた政治的・社会的な問題は、形が変わってはいるものの、起こっていること自体は残念ながら根本の部分で変わっていない。脚本の基本的な部分を一切変える必要がなかったのがその証拠です。まだまだ伝えていかなければならないことは多いと確信しています」

残酷さだけじゃなく、未来と希望も

公演「洞窟(ガマ)」のワンシーン(エーシーオー沖縄提供)

 もう一方の演劇「洞窟」は、本島南部のガマをつぶさに調査し、戦争体験者の証言も基にしながら脚本家の嶋津与志さんが織り上げた1980年初演の作品だ。沖縄戦も末期、ガマという“地下の闇の中”で避難民と敗戦兵とが入り乱れた極限状態を描く。

 戦後75年の節目として、昨年10月に1995年以来25年ぶりの上演を予定していたが、出演者の新型コロナウイルス感染で10月公演は中止。しかしその後、予定の半数にはなったが12月公演を実施した。コロナ禍での困難に見舞われながらも何とか上演を果たし、出演者やスタッフにとって思い出深い作品の1つになったという。

 代表理事の大城安恵さんは「作者の嶋さんは『人々の死に様だけではなくて、生き様を描きたい』と言っていました。極限の生き地獄のような描写もありますが、その一方で島の再生のエネルギーを蓄えた生命のシェルターでもあったんです」と作品の見所を説明する。

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