その数は膨大?!沖縄空手の本について 沖縄空手の世界③

 
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船越義珍著「琉球拳法 唐手」

 空手の特徴として、その圧倒的な出版点数が上げられます。単一のテーマにおいて、国内だけでなく海外においても、これだけ多くの出版数を誇るものは珍しいと思います。現在もその数は増え続けている空手の本について今回はお話しましょう。

最初の空手本は100年前に出版!

 空手について最も古いといわれている本が今から約100年前の大正11年(1922年)に発行された船越義珍著「琉球拳法 唐手」です。空手が日本に伝えられるとほぼ同時に本も出されていたことは注目に値します。

 この本は空手のあらましに加え、様々な技術をイラストと写真により解説しています。船越が上京して間もなく出された本で、東京で発行されました。船越の上京は文部省主催の第一回体育展覧会への参加が目的で、この時に空手の型と組手写真をパネルにして展示したというのも文化的な意味で興味深いところです。これが大正11年5月のことで、執筆はほどなく進められて(序文は同年8月付け)、本は同年11月に発行されています。

 一冊の本が完成するのにわずか半年で完成したことは今日の出版制作からしてもかなり早いペースで段取りよく進められたことが伺えます。

 この本の序文は海軍大佐の漢那憲和、歴史家の東恩納寛淳、沖縄タイムス主筆の末吉安恭という、その当時の沖縄文化人によるもので、沖縄色が濃厚です。

 本の出版いきさつについては、遠方から通信教育の依頼や空手の本についての要望が多数あっての制作と記されています。後に船越義珍は『琉球拳法 唐手』、『錬胆護身 唐手術』、『空手道教範』、『空手道一路』などの著作を出していくわけですが、空手の本はこの一冊から始まったということです。この著作は沖縄にも渡り、後の空手界に多大なる影響を与えたといわれています。

 松林流空手の長嶺将真流祖は、戦争中に沖縄で捕虜となり路上で偶然に「空手道教範」を拾い運命を感じたというエピソードを著書で述べています。尚、『琉球拳法 唐手』は1994年に沖縄の出版社である榕樹書林から復刻されて、他の著作も同様に復刻されています。

入手方法が困難な場合もある沖縄空手の本

 さて、空手の本は戦後から多く出されるようになりますが、沖縄の空手家は本土や海外からすると消極的というのが率直なところです。空手は直接触れ合い口伝で伝えていく慣わしから本を作ることをよしとしなかった風潮があったのかもしれません。

 本が出版されることは著者と出版人との関係性も大きな要因です。戦後、沖縄空手界を創ってきた四大空手家として知られる、小林流の比嘉佑直、松林流の長嶺将真、剛柔流の八木明徳、上地流の上地完英にはそれぞれ著書、監修書、評伝書があります。

 本の入手は本屋(書店)で購入できたり、図書館で閲覧できますが、沖縄空手の本は、自費出版で制作されるものがほとんどです。つまり、本屋に並ぶこともなく簡単に入手できない状況です。著者である空手の先生や空手道場で直接手に入れることが入手法となります。

沖縄の空手文化は継承され続けている

 今回、沖縄在住で積極的に沖縄空手の本を執筆、発行している二人の先生を紹介します。

 先ず、沖縄剛柔流の外間哲弘先生です。外間哲弘先生は沖縄剛柔流空手道拳志会会長であり、沖縄県空手博物館を私設博物館として運営しています。

 沖縄空手の先生達はそれぞれ資料を所有していますが、外間哲弘先生は積極的に資料を長年にわたって収集している第一人者です。過去、学校の教員を勤めていたこともあり指導技術は日本人だけでなく外国人にも多くの弟子がいます。また、空手だけでなく書(雅号・峻岩)、英語、琉球歴史も道場に通う子供たちに教えています。

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外間哲弘 著作集

 著書は自費出版として「沖縄空手道の歩み」、「沖縄空手列伝百人」、「空手史跡ガイドブック」、沖縄の出版社から「沖縄空手道・古武道の真髄」、「空手道歴史年表」、「沖縄空手七人の侍」などがあり海外版に翻訳されているものもあります。空手の技術書というより空手の研究書、学術書が主な著作です。

 沖縄県空手博物館では、資料の解説から空手の歴史、流派、人物、技術などの解説もしていますので、ぜひ一度訪ねてみてはいかがですか?

(沖縄県空手博物館 沖縄県西原町上原2-17-6 TEL/098-945-6148)


 次に、沖縄県指定空手古武道無形文化財保持者であり沖縄伝統古武道保存会文武館の仲本政博先生です。道場は首里城の近くにあります。

 仲本政博先生も一般公開していないものの資料室を作っており武具や貴重な文献資料を保管しています。(この資料については筆者が取材・編集している「新・空手道 第二号」道義出版にて紹介しています)。流派としては沖縄小林流で、特に武器術の古武道の専門家です。沖縄古武道の大家である平信賢師の直弟子です。又、水墨画も得意としています。

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仲本政博 著作集

 著書は「沖縄伝統古武道 その歴史と魂」、「中国・沖縄空手古武道の源流」、「沖縄伝統古武道 概略と首里手系の空手古武道の達人」、「沖縄伝統古武道 初級 その型と応用」、「武術と芸術」、「琉球の武士道」など。

(沖縄伝統古武道保存会文武館 沖縄県那覇市首里鳥堀町3-55 TEL/098-885-8518)

 空手に関して単なる格闘技や武道以上の文化的側面を知る上でも空手本の世界は非常に興味深い知識が凝縮されています。ぜひ一度手にとってみてください。

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藍原 しんや

藍原 しんや

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1968年・東京都出身。空手歴は8歳から始めた遠山寛賢伝の沖縄正統空手統道会、厳誠流空手道厳誠塾。24年間にわたり空手の映像制作の仕事に携わる。現在は空手雑誌「新・空手道」を制作。空手古書道連盟主宰。空手と古書と沖縄をこよなく愛する。

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