ライブ自粛の今こそ語りたい「体で感じる低音の魅力!」ベーシスト×ドラマー×DJ

 

 音楽の再生機器としてスマートフォンの台頭や、新型コロナウイルスの影響によるクラブ・ライブハウスの出入り自粛など“ちゃんとしたスピーカー”で“低音までしっかり音楽を聴く”機会が以前に比べ、失われつつある。2000年前後はコンポやヘッドホンなど、各社がこぞって重低音を前面に押し出した商品をリリースするなど「重低音ブーム」も到来していた。

 音楽において、低音の何がしびれるのか、低音の素晴らしき役目とは。今回は、日ごろから低音を「生み出す側」であるベーシスト、ドラマー、DJの3人に、それぞれ「低音の魅力」をテーマに語ってもらった。3人の共通項は「聴覚を超えて体に直接響く音」について言及したことだ。

「耳の聞こえない人に届ける音楽の楽しさ」ベーシスト・久田

迫力のベース音を奏でる久田友一郎

 「ベースの魅力というのは、あまり目立たないんですけど、バンドの中でリーダーシップが取れることです」

 そう語るのは、豊見城市伊良波でLive Bar BIGを経営するベーシストの久田友一郎だ。アンサンブルの中でしっかりと音の土台を作る役割が、ベースにはある。音程楽器の中では最低音を奏でる場合が多い。

 Live Bar BIGのステージ上にはそれぞれ性格の違うベースアンプが3台もある。通常のライブハウスには、ベースアンプは1台だ。

 「自分が気持ち良いだけの音色作りをしてしまうと、バンド全体の音を壊してしまいます」と話す久田が、自らの「ベース単体で弾くなら一番気持ちの良い音」を聞かせてくれた。低音成分がグワングワンと鳴った、さしずめ、ヤンチャな兄ちゃんの車から漏れ出すウーファーの音をもっと濃縮還元させたような地を鳴らす迫力音である。

 「ステージの床が振動して、足の裏がかゆくなることがあります」

 久田は低音の魅力を「体で感じられること」だと述べる。体で音を感じるのが好きすぎて、ベースを弾く時は背中のギリギリまでベースアンプに近づいて、少しでもその振動を自らに響かせているほどだ。

 ここで、久田の選ぶ「ここに響くのが心地よい身体の部位ベスト3」を発表する。

 3位 お尻

「(アンプから音を直接受けることになる体の後ろ側で)一番敏感なのはお尻だと思います。振動の第一波がまずお尻に来る」

 2位 頭

「だんだん痺れてくる感じがたまらないですね」

 1位 背中

「(面積的にも)一番長時間振動を感じることができます。また、自分で弾いているベース自体の振動をお腹にも感じているため、お腹と背中で振動に挟まれて最高です」

アンプギリギリまで背中をくっ付けて振動を思いっきり感じる

 「低音の振動」。これには、音という概念を超えて人々を幸せにする力がある。一番伝えたいことだと前置きして、久田は語る。

 「聴覚障害がある人に、どうやって音楽の楽しさを伝えられるのか、すごく悩んだ時期がありました。福祉施設の人に教えてもらったんです。『スピーカーの近くに来てもらってください。体で音圧を感じて楽しむことができます』と」

 耳が聞こえない人でも楽しめる「音の圧力」。

 「スマホでも何でも多くの場合、音楽を楽しむ時は、聴覚的な楽しみ1つだけになっている。トータルで楽しむ場所がライブハウスだったりフェスだったりする。みんな全部で感じて音楽を聴いてみてほしいです」

■久田友一郎の「この低音を聴け!」

Jamiroquai – Virtual Insanity

 「サビから入ってくるベースの存在感、グルーブがすごい」

「バスドラムの音こそ、人々が踊りたくなる」ドラマー・オド

シシノオドシのドラマー・オド(写真:日隈天明)

 1MCに1ドラマーの2人組ミクスチャーバンド「シシノオドシ」のドラマー・オドは自らを単にドラマーではなく「生ドラマー」と位置付ける。主にダンスミュージックなどで使われる電子的な「打ち込み」の音ではなく、生楽器であるドラムセットを叩いてビートを生み出すことからだ。

 「何でも『生』に越したことはないのではと思います。ビールでも魚でも生が一番美味い。肉も馬刺しみたいに生肉の方が好きなので、ドラムにも『生』を付けました。今年に入ってからそう名乗っているので、特に強いこだわりがあるわけではないですけどね」

 ドラムでは、一番低音を出す太鼓は「バスドラム」といわれる。観客からは最前方に位置し、垂直気味に立てられ、足でペダルを踏んで「ドン・ドン」という音を出す太鼓だ。足で鳴らすので通称「キック」ともいう。

キレキレのビートとは裏腹に、優しい語り口が魅力のオド

 ドラムからバスドラムが消えると、どうなるのか。オドは、何とも言えない表情を浮かべた。

 「バスドラ(バスドラムの略)がなくなるのが、どの部分よりも一番嫌ですねぇ。うわぁ、ちょっと想像できないです。こんなこと、想像したことなんてなかった…」

 これが無くなったことを想像するだけで、ドラマーは絶句する―。そういう存在が、バスドラムだ。

 「バスドラの音こそ、人が踊りたくなるような要素だと思います」

実際、いわゆるダンスミュージックはバスドラムの音が強調されている傾向にある。

「目の前でバスドラを踏まれることって、普通の人はなかなか無いと思いますが、まさにその迫力を感じてほしいです」

 コロナの影響で、シシノオドシもこの数カ月間、ライブができなかったが、6月14日に無観客の配信ながら、久しぶりにライブをすることができた。

 共演バンドのライブの生音を聴いて、オドは「受け止められないぐらい音を体感していた」と振り返っている。

 スマホの小さなスピーカーで、低音がしっかりと聴こえないままで音楽に触れることが多くなっている現状を、どう見ているのか。

 「音楽を聴く入口としては、それはそれで良いと思うんですよ。ただ、僕は大きい音で聴く良さも知ってしまっています。音楽を聴いていって現状の音に満足できなくなった時は『音質やボリュームも上げていってほしいな』とは思います」

■シシノオドシ・オドの「この低音を聴け!」

Billie Eilish – all the good girls go to hell

 「ミーハーなチョイスなんですけどね。ずーっと低音が鳴っています」

「心臓に響いて血の流れが速くなる高揚感」DJ HAMABE

選曲するDJ HAMABE

 浦添市屋富祖でミュージックバー・BROSを経営するDJ HAMABEは、毎晩スピーカーを揺らす低音を感じながらターンテーブルを回している。前出の久田、オドと同じように、低音の魅力として「体に響いてくること」を挙げる。

 「大きいスピーカーは体で聴けるんですよね。体で聴きたい」

 黒を基調とした店内は、重低音をさらに重く感じさせてくれる。ちょうど、ビートのしっかり効いたHIPHOPが筆者の胸に響いていた。

 DJやダンスミュージックにとって、低音の役割とは何か。

 「高揚感だと思います。直接心臓に響いてドキドキさせて、血の流れを早くするような、そういう作用があると思います。余計なこと考えなくなるでしょ?」

 もはや音の波動が、直接、物理的に心鼓動に共鳴する。音を耳で聴いて脳で処理するという次元を超えた力が、低音にはあるという。

 少年時代のDJ HAMABEが触れた音楽は、その時すでに低音と共にあった。

 「小学生だから、コンポを買うお金がないんですよ。でもみんなウォークマンは買えた。『ショックウェーブ』っていうパナソニックのウォークマンで、低音がバカみたいに出る。ウェーブって言うぐらいなのでヘッドホンが震えるんですよ(笑)当時、周りはみんなショックウェーブを持っていました」

 中学時代はメロコアやハードコアなどバンドミュージックに傾倒した。ブラックミュージックに触れ始めたのは宜野湾高校1年生の時だ。友人がイヤホンで聴かせてくれた。この時もイヤホンはショックウェーブに差さっていたのだった。

 今は自らが立つDJブースの両サイドに構えた大きなスピーカーから聴こえる音楽が、日常の音楽だ。

 「音楽は基本的に現場(クラブやライブハウスなど)で聴いた方が良いんですよ。音を作る側だって、イヤホンで作ってないですから」

スモッグマシンで気分を上げる

 そんなDJ HAMABEには密かな野望がある。「体で聴く」ための最高のスピーカーを自作することだ。

 「ガジュマルの木でスピーカーを作りたいです。湿気だらけなので乾かすのに何年かかるか分からないですけどね」

■DJ HAMABEの「この低音を聴け!」

NIPPS – GOD BIRD feat. K-BOMB, DEV LARGE, XBS & GORE-TEX

 「この曲はとにかくキックですね」

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長濱 良起

長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。2019年に県系移民などをつなぐウェブメディア「One Okinawa」創設。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(東洋企画)

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