キングスが初の天皇杯決勝進出、準決勝で横浜BCに96-91 猛追交わす

 
天皇杯準決勝で勝利を決め、強く抱き合って喜び合う今村佳太とジャック・クーリーら=2月15日、沖縄アリーナ

 バスケットボール第98回天皇杯全日本選手権は2月15日、準決勝2試合を行った。琉球ゴールデンキングスは沖縄アリーナで横浜ビー・コルセアーズ(横浜BC)と対戦し、後半に猛追を受けるも、96-91で勝利。球団初の決勝進出を決めた。キングスは3月12日午後3時から、東京の有明コロシアムで千葉ジェッツ(千葉J)と頂点を懸けて対戦する。

 天皇杯はプロ・アマを含めて日本一を決める大会で、1922年から100年以上の歴史を誇る。ただ、キングスが以前所属していた旧bjリーグは出場枠が付与されていなかった時期があり、キングスはBリーグ創設後の第93回大会(2017~18年)から出場。過去5回の成績では前回の第97回大会における4強入りがこれまでの最高成績だった。その際は準決勝で、今回決勝で当たる千葉に87-92で惜敗している。

勝負所でスリー決め切る 横浜の河村は45得点

スリーポイントを決め、三本指を立てる今村とファン

 横浜BC戦は序盤からキングスペース。持ち味である素早いボール回しでフリーをつくり、牧隼利や今村佳太らがスリーポイントを効率良く沈めた。さらに現在、Bリーグでリバウンド個人ランキングトップのジャック・クーリーを中心にインサイドも攻め、早々に相手ビッグマンの1人であるチャールズ・ジャクソンをファウルトラブルに追い込んだ。

 第1クオーター(Q)で29-18と先行すると、前半を12点リードで折り返した。しかし、後半に入ると日本代表ポイントガードである横浜BCの河村勇輝が爆発。身長169cmと小柄ながら、約20cmも高い今村や牧隼利らをマークに付けてもことごとくシュートを沈められ、第3Q中盤で2点差まで詰められた。

 それでも岸本のスリーやクーリーのゴール下シュートで突き放したキングス。第4Qも度々迫られたが、松脇圭志の連続得点やアレン・ダーラムのフリースローなどでリードを保ち、逃げ切った。河村は最終的にスリー9本を含む45得点を挙げる活躍を見せたが、キングスは牧、今村、岸本、松脇のアウトサイドの4人が7割を超える成功率でスリー12本を決め、要所で得点を重ねた。

リバウンド制し、相手の速攻防ぐ

鋭いドライブで岸本隆一を抜く横浜BCの河村勇輝

 「死闘だった」と振り返るキングスの桶谷大ヘッドコーチ(HC)は「第1Qはプラン通りにバスケができましたが、徐々に河村くんを乗せてしまいました。それでも選手たちが河村君よりも高い確率でスリーを決めてくれたことが勝因だと思います」と語った。

 また、序盤に横浜BCのジャクソンをファウルトラブルに追い込んだ事を「ゲームの肝」と指摘。内外でボールと人が動かしながらフリーで放ったシュートも多く、「横浜はリバウンドを取った後の速攻がめちゃくちゃ速いんですが、自分たちが良いシュートを打って良いシュートを決めたことで、リバウンドもあまり取られなかったです」と話し、自分たちのペースでバスケができたという感触を示した。

 一方、横浜BCの青木勇人HCは「思ったより相手のスリーが決まった印象でしたが、焦らずに自分たちのバスケを続けてれば第4Q最後にまくれると思っていました。ただ、琉球の選手たちは去年の悔しさもあったのか、それぞれがアグレッシブにプレーしていて本当に脅威でした」と語った。青木HCは現役時代にキングスでプレーした事がある。決勝に向け、キングスに「私も経験した、有明コロシアムの天井にまた沖縄の空を見せてくれれば、またバスケットが素晴らしいものになる。ぜひ琉球には頑張ってもらいたいです」とエールを送った。

千葉との決勝 得点力の高い外国籍を警戒

河村(左端)がフリースローを打つ間、コミュニケーションを図るキングスの選手たち

 決勝の舞台となる東京の有明コロシアムは、キングスが4度優勝を飾ったbjリーグのファイナルが行われていた場所だ。生え抜き11年目の岸本は「ホームのような感覚で試合ができる場所」と話し、「自分たちが優勝を狙う上でこの上ない状況が整ったと思います。あとは気持ちを乗せてプレーするだけ。すごく楽しみです」と初の頂点を見据えた。

 現在、Bリーグの成績ではキングスが29勝9敗で西地区2位につけているのに対し、千葉Jはリーグ全体で最高勝率となる34勝4敗で東地区1位。昨シーズンにキングスが記録したB1歴代最多連勝記録である20連勝に並んでおり、最強の相手と言っても過言ではない。

 今季はまだ直接対決はないが、今村は外国籍選手のヴィック・ローとクリストファー・スミスをキーになる選手に挙げ、「2人とも本当に外のシュートが上手で、いろんな事ができる選手。この2人に気持ち良くプレーさせたいないようにしないといけない」と警戒感を示す。一方で「うちのビッグマンはフィジカルが強いので、その辺りはアドバンテージになるのかなと思っています」と展望した。

 7シーズン目に入ったBリーグが創設されて以降、キングスはまだ天皇杯、Bリーグを通してタイトルがない。それを念頭に、今村は「ここでタイトルを一つ獲ることによって、自分たちが次のステップに上がる大きなきっかけになる。ただ考えすぎず、やるべき事をしっかりやっていればおのずと結果は着いてくると思っています」と意気込みを語った。


長嶺 真輝

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ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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