コロナ禍のパラリンピック~車いすマラソン喜納翼の涙と笑顔~

 

喜納翼選手(下地隆之コーチ提供)

 2019年の大分国際車いすマラソン(42.195km)で1時間35分50秒の日本新記録を打ち立て、2020年東京マラソン優勝など活躍をみせて、東京パラリンピックへの出場権を得た喜納翼(きな つばさ)選手が、8月19日に地元のうるま市役所を表敬訪問した。故郷からのエールを受け大舞台への思いを新たにした喜納は、コロナ禍で迎えたパラリンピックに挑む苦悩と意気込みを率直に語った。

不慮の事故からの挑戦と苦悩

 小学4年生から始めたバスケットボールでコザ高校時代は国体出場。大学でも競技を続けていた中、トレーニング中の事故で脊髄を損傷し、車いす生活となった喜納翼(31、タイヤランド沖縄)。2013年から始めた車いすマラソンで頭角を表し国内外の大会で活躍。初のパラリンピック出場を勝ち取った。県勢としては、同じく陸上で4大会連続の出場を果たした2008年北京パラリンピック車いすマラソン銀メダリストの上与那原寛和(うえよなばるひろかず)選手とともの出場となる。

 夢の大舞台ではあるが、コロナ禍でここ1年余り国際大会に参加できず、沖縄での練習も競技場の使用ができず調整の苦労は耐えない。さらに東京オリンピック・パラリンピック開催の是非を巡る声には、出場アスリートとして苦悩するものもあった。その中で迎えた市役所訪問は、喜納にとって勇気づけられる出来事となった。

子どもたちからのサプライズ

 表敬では喜納の後援会長も務める、うるま市の中村市長から激励金の贈呈や「無観客開催だが、うるま市から応援している。目標に向かって頑張って欲しい」とのエールが送られた。
 そしてサプライズで、喜納が講演を行ったことがある市内の南原小学校を代表して、児童会長の井上俐翔(いのうえ りと)君が300人あまりの児童の応援コメント入り横断幕をプレゼントし、メッセージビデオが上映された。画面を見つめる喜納の瞳からは涙がこぼれた。

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